研究成果は以下の通りである。 1)有機酸代謝異常のうち、グルタル酸血症1型の日本人症例19例の臨床および分子レベルでの解析を行った。これまで日本人患者では欧米で報告されてきた遺伝子変異とは異なること、臨床的重症度は遺伝子変異よりも診断時期、治療開始時期の影響が多いことが明らかになった。このデータは今後症例の増えることが予想される。アジア諸国の患者との比較をするための基本データとなる。 2)全身性カルニチン欠乏症は日本人に比較的多いと言われているが、酵素活性測定は簡単ではない。タンデムマスと培養細胞を用いるin vitro probe assayという方法を応用して、培養液に添加するカルニチン濃度を変えることによって、酵素診断法を開発した。論文作成中である。 3)小児では、食中毒から急性の経過をとって突然死にまで至ることがある。セレウス菌の毒素であるセレウリドをin vitro probe assayの測定系に加えて実験を行なったところ、セレウリドはミトコンドリアβ酸化を抑制することがわかった。β酸化障害によって急性脳症、突然死に至るという機序が考えられる。次年度に基礎実験を追加して論文発表する予定である。
|