研究課題
加齢黄斑変性(AMD)は先進諸国における中高年の失明原因の首位であり、高齢化社会の進行に伴い今後益々罹患人口が増加すると危惧される。AMDでは高度の視力障害を惹起する滲出型AMDが問題であり、滲出型AMDの病態は網膜色素上皮(RPE)の変性に伴う脈絡膜新生血管(CNV)である。CNV中には骨髄由来の血管内皮前駆細胞(EPC)の存在が見られることから、CNV形成におけるEPCの重要性が示唆されている。しかしCNV形成過程において、EPCが網膜下の局所に動員されるメカニズムは解明されていない。そこで我々は、AMDの前駆病変であるドルーゼン中のアミロイドβ(Aβ)に着目し、Aβ蓄積によりEPCが網膜下に動員される分子メカニズムを解明した。具体的には、1)単核細胞の遊走に関与するケモカインfractalkineとその受容体CX3CR1は、EPCの遊走を惹起する能を有し、boyden chamber法においてfractalkineはEPCの遊走を惹起することが証明された。2)EPCにおけるCX3CR1の発現はHUVECよりほぼ50倍高かったことから、EPCは成熟内皮細胞より非常に高い遊走能を持つ可能性を示した。3)AβはRPEにおけるfractalkineの発現とEPCにおけるCX3CR1の発現を上昇させたとともに、fractalkine/CX3CR1を介するEPCの遊走を促進した。4)fractalkineはCX3CR1欠損EPCの遊走を惹起できず、Aβもその遊走を促進できなかった。5)CX3CR1欠損マウスにおけるレーザー誘導CNVのサイズは野生型マウスと比較し、非常に小さかった。以上の研究により、fractalkine/CX3CR1を介するEPCの遊走はCNVの発症に重要し、AβはfractalkineとCX3CR1の発現を上昇させ、EPCの遊走を更に促進することが分かった。Aβ蓄積からCNV発生に至る重要なプロセスである、骨髄からのEPCの網膜下への動員に関する主たる分子機構が解明し予防治療に結びつけようとするものである。
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American Journal of Ophthalmology
巻: 151 ページ: 137-147