研究課題/領域番号 |
10F00502
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
NORI FRANCO 独立行政法人理化学研究所, デジタル・マテリアル研究チーム, チームリーダー
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研究分担者 |
GIAVARAS Georgios 独立行政法人理化学研究所, デジタル・マテリアル研究チーム, 外国人特別研究員
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キーワード | グラフェン / 量子ドット / ディラック方程式 / 電子閉じ込め / クライン・トンネル / 状態密度 / ランダウ準位 / 電場と磁場 |
研究概要 |
2011年度において、我々はグラフェン膜の直交方向に印加された電場および均一磁場を組み合わせて形成されたグラフェン量子ドットを研究した。電場はなめらかな量子井戸型ポテンシャルを形成し、磁場はドット状態に指数関数的テールを誘起する。これらの状態は、クライン・トンネル効果として、井戸型ポテンシャルおよび静電障壁領域内でピークを示す。後者はグラフェンに特有な相対論的効果である。我々は、異なる領域でピークをもつドット状態間の結合は電磁場によって制御可能であることを示した。この結合の証拠はドットのエネルギースペクトルにおける一連の反交差ポイントの発現である。中程度の外場による、このドットの同調可能性は単層グラフェン内に量子素子を設計するために使用することができる。特に電場は、ランダウギャップ内のエネルギー準位を誘起することにより、ランダウ準位のスペクトルを変化させる。これらのエネルギー準位は比較的低い状態密度内に存在する。我々の研究では、これらのレベルの同調可能性は電場と磁場の両方により実現可能であることが示された。 ドット状態は、グラフェンの相対論的特性に起因する特徴を示す。磁場が低い場合は、クライン・トンネル効果のために、量子井戸領域内にピークをもつが静電障壁領域内に大きな振動振幅も有する状態のクラスが存在する。この磁場を増加させると、障壁内での振幅は指数関数的に減少し、状態はドットの中心付近に閉じ込められるようになる。磁場によるクライン・トンネル効果の抑制は結合したドットにも利用することが可能である。 理想的な想定では、対象とするドット状態は、エネルギーギャップが最大となるLLの0および1(あるいは+1)の間に存在しなければならない。我々は、量子井戸の深さを調節することによりこの条件を容易に実現できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々の研究は当初の計画に従って進行している。現段階で多数の興味ある結果を得ており、単層グラフェン量子ドットの物理を深く理解している。特に、任意の外部電磁場を取り扱うことができ、また誘起され状態密度の数値計算に適切なソフトウェアを開発した。このソフトウェアはまた、多少変更すれば多重ドットシステムの研究にも利用可能である。電磁場の種類(電気または磁気)の個々の役割を明確に見出しており、また状態密度が比較的低いために満足すべき条件も見出した。これらの結果により我々の当初の推測が確認され、実験的に調査可能なドット物理の現実的な領域が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
単一ドットの物理の研究成果を踏まえ、来年度は2つのドット間におけるトンネル結合の機構を研究する予定である。結合強度は、静電的に発生するポテンシャル障壁に関して、また2つのドット間でのエネルギーのオフセットに関しても計算される。クライン・トンネル効果の役割は、結合状態の計算を通じて明確にされ、ポテンシャル障壁が高い場合であっても大きな振動振幅をもつことが期待される。磁場そして/または基盤により誘起されるエネルギーギャップが振幅を抑制し、したがって結合強度を制御することができるかどうかを研究する予定である。結合機構の特徴である反交差ポイントの発現に特に注目しながら、ディラック方程式の厳密な対角化という視点からエネルギースペクトルを研究していく。
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