研究概要 |
非常に多くの電子情報システムにおいて、データの保全性を保証するための極めて重要な要素技術として、すでに電子署名の活用が広くなされている。しかし、従来の電子署名の機能は必ずしも十分ではなく、情報システムの高度化に伴い、有用な付加機能や、それに付随したより高度な安全性がなおも求められている。本研究においては、そのような社会的要望に応えることを主たる目的としている。また、ここで得られた知見を活用し、それを電子署名以外の暗号技術(たとえば、(非)対話証明など)にも適用し、さまざまな実用的暗号技術の研究および開発を行っている。本年度においては、前年度の研究成果を受け、より原始的暗号技術に焦点を当てて研究開発を行った。特に、従来の電子署名がもつ基本的な機能について、それをより安全で効率的に実現するための新たな構成手法について研究を行っている。この研究においては、従来の電子署名の安全性や効率性を向上させることのみを目的とはせず、得られた知見を用いて、多種多様な付加機能つき電子署名についても一般的に安全性と効率性を向上可能となるよう念頭においたうえで研究を行った。本研究計画の最終年度である本年度においては、特に、プライバシ保護機能をもつ認証技術のうち最も基本的な技術のひとつであるグループ署名やその関連技術について、それらの安全性評価および安全な構成方法について研究を行った。グループ署名に関しては、従来の安全性の定義においてとらえられていなかったタイプの現実的な攻撃方法の存在を示唆し、より幅広い利用環境での利用に耐えうるための新たな安全性定義と、それを満足するための具体的な構成方法を示した。また、グループ署名と同様に、利用者が自分自身がある利用者集合に含まれていることをゼロ知識対話証明で証明可能な認証プロトコルの提案も行った。さらに、公開鍵暗号の構成に関する基礎的理論の整備も行い、証明可能安全な公開鍵暗号における暗号文サイズの非自明な下界を明らかにした。これらの成果により、権威ある国際会議CRYPTO 2012, PKC 2012(二件)の採録がなされ、さらに、Springer-Verlag社Lecture Notes in Computer Scienceシリーズより、合計三本の論文が出版されている。
|