研究課題
インフルエンザワクチンは流行株予測に基づき作製されるが、ワクチン株と流行株が異なると効果が著しく低下する。そこでウイルスの変異株に対しても有効な普遍的なインフルエンザワクチンが求められている。経鼻投与型インフルエンザワクチンは、現行の皮下接種型ワクチンと異なり、感染の場となる気道粘膜上に交叉防御能を有する分泌型IgA抗体を誘導し、感染自体を阻止することが明らかになっている。本研究では、ワクチンの経鼻接種により交叉防御能の高い免疫を誘導するワクチンの開発と機序の解明を目指した基盤的研究を目的とする。ワクチン接種により誘導されるメモリーB細胞と持続的な抗体産生を行う形質細胞は、実際のウイルス感染時にウイルス排除において重要な役割を担うことが知られている。しかしながら、経鼻投与型インフルエンザワクチンにおけるメモリーB細胞や形質細胞の誘導は明らかになっていない。そこでH23年度の研究では、経鼻ワクチンにより誘導されるメモリーB細胞に注目し、ヒトにおいて経鼻ワクチン接種後に粘膜組織に誘導されるIgG及びIgA抗体のメモリーB細胞についてELISPOT法を用いて解析を行った。本研究は、国立感染症研究所ヒトを対象とする医学研究倫理審査委員会承認のもと実施した。季節性インフルエンザウイルスA/H3N2の全粒子不活化ワクチンの経鼻接種を受けた健康成人ボランティアに関して、抹消血リンパ球におけるワクチン特異的なIgGあるいはIgA抗体を産生するメモリーB細胞を評価した。ワクチン接種前には、ワクチン特異的なIgA産生メモリーB細胞は存在しないのに対し、IgG産生メモリーB細胞は低いながらも測定可能なレベルで存在することが判明した。さらに、IgA産生メモリーB細胞の割合は、鼻腔洗浄液におけるワクチン株に対する中和抗体価ならびに血球凝集阻害抗体価と相関することが示された。
2: おおむね順調に進展している
これまでの研究で、当該研究目的を達成するために必要となる実験系の導入・確立を行い、実際にメモリーB細胞を評価することが出来た。
これから実施予定の健康成人ボランティアを募った経鼻投与型インフルエンザワクチンに関する臨床研究(国立感染症研究所ヒトを対象とする医学研究倫理審査委員会承認済み)において、解析を行う対象を増やし、導入・確立した実験系を用いて経鼻投与型インフルエンザワクチンの有効性ならびに作用機序に関して検討を行う予定である。現時点において、当該研究課題推進上における実験計画の変更、ならびに問題点はない。
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