研究概要 |
Runxタンパクは標的遺伝子の発現を正にも負にも制御する活性を持つ転写因子であり、多細胞生物の発生・分化過程に重要な機能を持つことが知られている。RunxタンパクのC末端にに存在するVWRPY配列は生物種を超えて良く保存されおり、Groucho/TLE転写抑制共役因子ファミリーとの会合に必須であることから、Runxタンパクによる遺伝子発現抑制に重要な役割を果たすと考えられている。本研究課題ではVWRPY配列の機能解明を目的に、VWRPY配列を欠損した変異Runx1タンパク、Runx3タンパクのみを産生するRunx1^<ΔV>マウス、Runx3^<ΔV>マウスを交配し、Runx1とRunx3両タンパクでVWRPY配列を欠損するRunx1^<ΔV/ΔV>, Ruur3^<ΔV/ΔV>マウスを作製した。これらマウスモデルを用い、T細胞分化過程でRunxタンパクによるサイレンサーの活性化により遺伝子発現が抑制されることが知られているCd4、ThP0K、IL4遺伝子を研究対象にその発現を解析した。その結果、Runxタンパクによる遺伝子発現抑制機構は、野営型Runxの発現量に依存し、また標的遺伝子により、VWRPY配列への依存性は異なることが判明した。Runx1の機能欠損によりiNKT細胞分化が著名に障害されるが、Runx1タンパクでのVWRPY配列により同様に、iNKT細胞分化が障害されていた。またRunx1^<ΔV/ΔV>;Runx3^<ΔV/ΔV>マウスではTh1ヘルパーT細胞からのIL-4の産生と肺への細胞浸潤が自然発症したことから、RunxタンパクのVWRPY配列は免疫応答を調整し、個体の恒常性の維持に重要であると考えられた。これらの成果は国際学術会議にて発表し、また国際雑誌に論文投稿した。
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