本研究では、従来の半導体プロセスに依存したマイクロマシニング技術では対応できない大面積(幅数十cm)に渉るMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスを製作するための技術として、インクジェット印刷プロセスによるマイクロ加工を検討した。研究代表者らは、平成21年度以前にはグラビア印刷やフレキソ印刷を用いたロール・ツー・ロール型の印刷技術によって大面積MEMSを加工する方法を開発した。しかしながら、この方法ではMEMS設計変更に応じて、その都度印刷原盤を変更する必要がある。そこで今回は新たに工業用インクジェット・プリンタを導入し、これを用いて半導体プロセス用のフォトレジストやその他の有機系材料を射出塗布することで、機械的に柔軟な薄いプラスチックフィルム材料の上に印刷解像度100μm程度の微細パターンを形成することに成功した。また、インクジェット印刷前のフィルム表面にC4F8系のテフロン材料をプラズマ堆積することで表面状態(疎水/親水)を調べ、系統的な印刷条件を確立した。また、この製造手法に基づいたフィルム型の静電アクチュエータ構造を設計し、より低い電圧で駆動するための設計手法とプロセス手法を見いだした。これらの成果に基づき、静電駆動ファブリ・ペロ干渉計型のカラーピクセルを製作し、大面積フレキシブルディスプレイへの応用を検討する実験を行った。
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