研究課題/領域番号 |
10F00723
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊山 修 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授
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研究分担者 |
DEMONET Laurent 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | 団(クラスター)代数 / 前射影多元環 / ホップモナド / 同変圏 / 2カラビ・ヤウ三角圏 / 団(クラスター)傾対象 / 変異 / ポテンシャル付き箙(クイバー) |
研究概要 |
群作用の与えられた圏を調べる事が、歪対称化可能な団(クラスター)代数の研究において非常に重要である。これを体系的な枠組みで捉えるため、特別研究員は本年度、ホップモナドの圏への作用を研究した。これは圏上のホップ代数の概念を一般化したものである。特別研究員は、単純性の概念を一般化した、作用に関するある仮定の元で、もとの圏のいくつかのホモロジー代数的性質が、モナドの同変圏に遺伝することを証明した。また、同変圏に作用するモナドを見つけることは自然な問題であり、ホップモナドの双対概念と捉えられる。特別研究員はこの問題にも取り組んでいる。 他の研究として、特別研究員は受け入れ研究者と共同で、団傾対象を持つ2カラビ・ヤウ三角圏における、団傾対象の指数全体のなす組み合わせ論的構造の研究を行っている。特に、これを応用して団傾対象の変異グラフの連結成分を決定することが一つの目標であり、既に特定の場合には完全な結果を得る事に成功している。同時に我々は、Derksen-Weyman-Zelevinskyの導入したポテンシャル付き箙(クイバー)の変異を一般化した、複数の頂点における同時変異の公式を見出すことを試みており、部分的な成果を得ている。この研究によって団傾対象全体の組み合わせ的構造をより深く理解が可能となることが期待される。特別研究員はこれまでの研究成果に関して、静岡大学で開かれた「第10回静岡代数学セミナー」における2回の連続講演、東京大学の「リー群・表現論セミナー」での講演、および岡山大学で開かれた「第44回環論および表現論シンポジウム」での講演において公表を行った。またバンフで開かれた「Cluster algebras, representation theory, and Poisson geometry」および上海交通大学で開かれた「Shanghai Conference on Representation Theory of Algebras」に参加し、情報交換を行った。また、特別研究員は名古屋大学にパリ大学のSarah Scherotzke氏を招へいし、議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
群作用付きの前射影多元環を用いた歪対称化可能な団(クラスター)代数の圏論化に関しては、表現論的側面に対して十分な成果が得られている一方で、半標準基底を扱う部分では技術的困難が出現する事が明らかとなった。その一方で団理論における重要問題である、変異グラフの連結成分の決定に関して、指数を用いた新しいアプローチを見出す事ができた。またホップモナドとポテンシャル付き箙の同時変異に関しても、大きな前進があった。以上総じて、団理論に関する研究計画は、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
団理論における重要性がより明らかとなった、(1)指数を用いた変異グラフの連結性の研究(2)ホップモナド(3)ポテンシャル付き箙の同時変異、以上の3つのテーマに関して、集中して研究を行っていく予定である。
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