本年度は昨年度行った非マルコフ性について研究をさらに発展させ、系と熱浴が強く結合していることにより生じる平衡統計力学からのずれについて詳細に研究した。具体的には2スピン系に2つの熱浴をつけた研究を行った。この計算は2つの独立した階層を扱うことになり、計算コストは大変高いが並列化等の処理により初めて可能になった。系と熱浴との相関に関しても、非線形応答関数を計算する手法を応用することでより深く研究しBathentanglementという概念を導入して、その解析を行った。結合強度が強い領域で熱浴とのエンタングルメントにより、通常の熱力学と様相が大きくことなることをパンプ・プローブなどの非線形分光スペクトルと結びつけながら研究を行った。光合成FMO系についてこのような概念を導入することで、これまでの結果を変えるかについてもチェックを行った。これまではドルーデ型という構造をもたないスペクトル分布関数にを用いて主に研究をおこなったが、ブラウニアン型という、共鳴周波数をもつスペクトル分布関数に対する階層方程式をもちいることで、電子移動反応についての2次元分光についても研究を開始した。マーカスのインバーテッドパラボロと呼ばれる化学反応律の変化を、シーケンシャルからスーパーエクスチェンジと呼ばれる電子移動反応領域について、階層方程式を用いることで統一的に議論し、それがどのように多次元分光スペクトルに反映されるかについてのシミュレーションを開始している。結果はヨーロッパやシンガポール等の国際会議で発表し、投稿中を含む2本の論文として出版した。
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