近年、「時代のキーワード」としての「コスモポリタニズム」は政治思想学者たちに活発に議論されてきた。「ポスト国家」主体のメンタリティとして、コスモポリタニズムとは一般に(1)グローバル民主主義の理想への忠誠と(2)国家や特定の人種宗教などを基盤とした集合体への帰属を超越する規範の尊重、として特徴づけられる。この概念は政治思想学者たちに活発に議論されてきたものの、人々が実際どのように自身の国家への帰属と、グローバルな市民社会のメンバーであることを経験しているかについては殆ど知られていない。特定の文脈における「経験」「実践」としてのコスモポリタニズムを検証するべくエスノグラフィー(民族誌)研究を行う。具体的には日本における二つの社会的フィールド、すなわち(1)政治的・法的なものと(2)文化的・美的なそれに焦点を絞り、それらの空間でどのように「国家」への帰属意識と、その枠を超えることへの欲望がときに矛盾を呈しつつ相互作用するかを調査。平成22年度には関連書籍や資料の収集、研究環境に必要な備品購入、フィールドワークのため適切な機関や団体を訪問、資料収集の分析を経て、スコットランドのSt.Andrews大学コスモポリタニズム研究所のワークショップ(Cosmopolitanism and imagination)に参加し研究報告。
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