現代日本の固有の社会文化的文脈で実践・経験される「コスモポリタニズム」に関しての考察のために日本社会におけるコスモポリタン的市民意識の形成の民族誌調査と分析を行った。対象として人々の国家への帰属の感覚と国家等の帰属のカテゴリーを超える欲望が接触する二つの主要な社会的「フィールド」(政治的・法的フィールドと美的・文化的フィールド)を提案し、日本社会において、個々人が「外国」との文化的・政治的・社会的な出会いの体験の中で「楽しみ」と「闘争」という二つの相反するかに見えるイディオムを通して日常生活や地域に根ざした国際的な市民感覚を体得する経過に関しての考察を、本研究の狙いとした。 7月、パリ大学での国際会議で研究の成果を発表した際に文化人類学者、哲学、そしてアジア研究者からのフィードバックを受けた。現在この研究の結果を出版するための準備中であり単著の提案書を作成中である。2012年4月にこの研究の一部に基づいた論文がフィンランドの文化人類学会の公式学術誌、Suomen Antropologiに掲載された。 この研究を通して日本社会の国際的な市民権意識の文化的・美的または政治的な構築過程を検討し道徳や倫理観のグローバルな流通が日本人の帰属意識・感覚に与える影響も考察することができた。本研究は「コスモポリス(世界都市)」概念と人々とのダイナミックな関わりにも特別に焦点を当て、また本研究は日本社会の市民意識の変遷の過程の記述と分析にも貢献することが期待される。
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