この研究の目的は、ヒトゲノムにおいてノンコーディングRNA(ncRNAs)が機能するメカニズムとその生理的役割を明らかにすることにある。タンパク質をコードする領域が、哺乳類ゲノムのわずか2%以下であるにも関わらず、ncRNAsはゲノムの主要な転写産物である。この大量のncRNAsは、シス、トランスに染色体上のターゲット配列と結合することによって、転写に干渉したり、それを活性化したりすると考えられる。また、これらncRNAsがどのような核内因子と結びつくことができるのかといったメカニズムの解明は、ncRNAの生理的役割を理解するために重要であろう。そのためには、ncRNAとクロマチンの結合やその規則を明らかにする新しい方法が必要である、我々は、クロマチン間の相互作用に関与しているncRNAを同定できる全クロマチンネットワーク(GCN)法を開発する。この方法は、次世代シークエンサーを用い、核内においてDNA-RNA2本鎖と3次元的な距離が最も近いDNA-DNA2本鎖領域を同定する。さらにこの方法は、特異的抗体による免疫沈降法と組み合わせることで、修飾(メチル化)されたヒストンやポリコームグループなどのDNA結合タンパク質を介した、ncRNAと相互作用するDNA領域も同定できる。さらに、この方法で明らかとなった3次元的相互作用を順次破壊することで、結合タンパク質やncRNAの再配置を促し、それによって生理的に必要な制御因子を予想することができると考えている。私は、数ヶ月前から、クロマチンと結合したncRNAsの3'-OHとクロマチンの5'-Pをつなぐアダプターのデザインを開始した。最初に、ncRNAを想定した合成短鎖1本鎖RNAとアダプターのライゲーションを確認するため、T4RNA K227Qリガーゼの基質となるようアデニル化2本鎖DNAアダプターを合成し、ダイナビーズで精製し、それを合成RNAとライゲートしたところ、うまく産物を得ることができた。現在このアダプターを、クロマチンを想定した合成2本鎖DNAとライゲート可能かどうか確認している。
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