研究課題/領域番号 |
10F00775
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐々木 節 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授
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研究分担者 |
ALABIDI Laila 京都大学, 基礎物理学研究所, 外国人特別研究員
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キーワード | インフレーション宇宙 / 宇宙論的非線形揺らぎ / 宇宙論的重力波 / 宇宙論的非ガウス揺らぎ |
研究概要 |
本年度は以下の3つのテーマに関して研究を進めた。 (1) 2次の宇宙論的摂動からの重力波 インフレーション宇宙では、宇宙の構造形成の種となる曲率揺らぎに加えて、時空の量子揺らぎが増幅し、現在重力波として観測されると期待されている。しかし、小さなスケールでより大きな曲率揺らぎの振幅を与えるモデルにおいては、摂動の2次で生成される重力波も将来的に観測可能と考えられている。しかし、摂動の振幅が大きすぎると原始ブラックホールの過剰生成が起こることが知られている。そこで、この2次摂動からの重力波を正確に評価し、原始ブラックホールの過剰生成の制限にかからない範囲で、実際に観測可能かどうかを詳しく調べた。その結果、モデルによっては、DECIGO,BBOやLISAなどの将来のスペース重力波干渉計で十分観測可能であることを明らかにした。この成果は最近arXivに発表した(arXiv:1203.4663)。査読雑誌への投稿は現在準備中である。 (2) 複数場インフレーションモデルにおける4点関数 最近、インフレーション宇宙からの揺らぎの非ガウス性の検出可能性が盛んに議論されており、曲率揺らぎの3点関数に関しては、一般的な性質がかなり分かってきた。そこで、場が2つある場合の一般的インフレーションモデルにおける曲率揺らぎの4点関数の性質を詳しく解析し、それがどのような場合に大きな値を取るかを系統的に調べた。この成果もarXivに発表し(arXiv:1203.684)、現在査読雑誌へ投稿中である。 (3) 3点関数スペクトルの簡潔な計算手法 場が2つある場合のインフレーション宇宙における曲率揺らぎの3点関数の計算は、一般には極めて煩雑である。そこで、これをより高速かつ安定的に計算するコードを開発した。このコードは解析的計算が難しいモデルの3点関数の計算に役立つ。この成果は、現存論文を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は順調に進んでいる。いくつかのプロジェクトを並行して進めたため、学術雑誌の論文としての発表が少し遅れ気味であるが、arXivには既に発表しており、ここ1-2ヶ月中に一挙に2-3編の論文が査読付き雑誌に掲載決定となると予想されるので、研究が遅れているわけではない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画の総仕上げの年であるので、9月頃をめどに研究成果をまとめること、またそうした成果を国際会議やセミナー等で積極的に発表する。
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