研究課題/領域番号 |
10F00778
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉本 茂樹 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任教授
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研究分担者 |
SCHMUDE Johannes 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 外国人特別研究員
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キーワード | Dブレイン / ゲージ理論 / 双対性 / 超弦理論 / 超共形指数 / AdS/CFT対応 / 超重力理論 |
研究概要 |
平成23年度はます、交付申請書に記載したO8ブレインとD8ブレインを用いたホログラフィック双対に関する研究を行った。しかし、一通り解析を行った結果、当初予想していたような良い結果が得られなかったため、方針を若干変更し、平成23年度から繰越期間(平成24年度)にかけて、O3プレインとD3プレインを組み合わせた系を用いて、超対称性のない4次元のゲージ理論におけるカラーの閉じ込めなどの性質を超弦理論の双対性を用いて解析する研究を行った。超弦理論の中にO3プレインとD3ブレインを超対称性を破るように配置することで4次元の超対称性のないゲージ理論を実現し、さらに超弦理論の双対性を適用することによって、このゲージ理論における双対性を得ることができる。この双対性によって強結合理論で予想されるカラーの閉じ込めや対称性の力学的破れなどの現象を弱結合の理論を用いて解析することが可能になり、強結合理論でカラーの閉じ込めや対称性の力学的破れなどの現象が起こっている強い証拠を得ることができた。この系は弦理論の双対性が超対称性のないゲージ理論の解析が大変有用であることを示す貴重な例になっており、今後、現実のQCDを含むさまざまなゲージ理論への応用が期待される。 研究分担者のSchmude氏は、まず超重力理論で超対称性が破れた解を構成する研究を行った。タイプIIB型の超重力理論において佐々木-アインシュタイン多様体でコンパクト化し、そこに超対称性を破るフラックスを加えて新しい解を構成した。また超共形ゲージ理論の超共形指数と呼ばれる量をAdS/CFT対応に基づいて解析する研究も行った。弦理論側の解析は5次元の反ドジッター時空と佐々木-アインシュタイン多様体の直積で与えられる時空における超重力理論を用いて行われ、これがゲージ理論側の解析の結果と一致することを確かめた。さらに、超重力理論における記述によって、超共形指数が佐々木-アインシュタイン多様体のKohn-Rossiコホモロジー群との関係などを明らかにした。これらの結果はAdS/CFT対応が成立する証拠を得るとともに、ゲージ理論の解析に有用な幾何学的手法を開発した重要な成果である。
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