研究課題
ワイドバンドギャップ半導体である炭化ケイ素(Sic)に着目し、電子線照射を用いた欠陥生成による新たな単一発光中心の探索を行った。具体的な内容を以下に示す。本研究では半絶縁性Sicに1MeVで電子線を照射することで欠陥を導入し、その後、真空中300℃で熱処理を行うことで特定の欠陥の生成(残留)を試みた。その結果、室温においても非常に明るく発光する従来の報告に無い単一発光中心がSic中に形成されることを共焦点顕微鏡によるアンチバンチング測定により確認した。更に、この発光中心のアンチバンチング測定結果を二次の相関関数を用いて解析することで発光の減衰挙動を明らかにした。その結果、発光中心には準安定な状態があり、発光を伴わずに基底状態となる緩和課程が存在することが判明した。哩論計算を行ったところ、この現象は欠陥の特性に起因し、電子のスピン-軌道相互作用によるものと推論できた。また、この発光中心の量子発光効率は70%であることも併せて判明した(30%は非発光での緩和課程)。本研究では、この単一発光中心の構造同定に関する研究も進めた。その結果、正に帯電した炭素空孔(Vc)とSi格子位置をCが置換したCアンチサイト(Csi)の複合欠陥(CsiVc^+)が最有力候補であるという解釈が得られた。これまでの低温でのフォトルミネッセンス評価の報告では、この波長にピークを有する発光は中性のCsiVcに由来すると言われていたが、今回ab intitoと群論を用いた理論計算を行うことでCsiVc^+を提案するに至った。但し、現時点ではC_<Si>Vc^+に完全に構造決定したという訳では無く、欠陥構造の完全同定には詳細な理論的考察を含め、今後の更なる研究が必要であると考える。
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IEEE conference publication, Proceedings of 2012 Conference on Optoelectronic and Microelectronic Materials and Devices (COMMAD 2012)
ページ: 217-218
10.1109/COMMAD.2012.6472328
http://www.taka.jaea.go.jp/eimr_div/RadEffects/index_j.html