研究課題
ピストン脱アセチル化酵素(HDAC)はピストンのアセチル化されたリシン残基を脱アセチル化する反応を触媒し多くの遺伝子発現を制御している。最近、Class Iに属するHDAC8がT細胞性腫瘍や神経芽細胞腫に関与することが明らかにされた。本年度はClick Chemistry(Cu(I)-catalyzed Azide-Alkyne Cycloaddition(CuAAC)を用いてHDAC8選択的阻害化合物の創製研究を行った。CuAACによりアジド化合物とアルキン化合物を連結させ、簡便に多数のトリアゾール体を合成した。合成した化合物のHDAC8阻害活性を調べた結果、既知のHDAC阻害化合物Vorinostatや、選択的HDAC8阻害化合物PCI-34051に優る高選択的高活性HDAC8阻害化合物を見出すことができた。本化合物は、制がん剤候補化合物として期待できる。一方、Sirtuinは、HDACファミリーのClass IIIに属するNAD^+を補酵素とする酵素である。Sirtuinは、細胞機能を制御し、老化、がん化、DNA損傷修復など、多くの生命機能に関与することが知られている。ヒトSirtuinの1つであるSIRT2は、主にα-tubulinの脱アセチル化を担い、細胞周期の制御を行っている。近年、SIRT2を阻害することで神経細胞死を抑制することが報告された。そこで、本研究では、SIRT2選択的阻害化合物の創製研究を行った。CuAACを用いたクリックケミストリーで多数の阻害候補化合物を合成した。これらの化合物のSIRT2選択的阻害活性については、研究期間中には完結しなかった。今後、活性解析実験をすすめる。
2: おおむね順調に進展している
クリックケミストリーの手法を用いて、ピストン脱アセチル化酵素(HDAC-8およびSIRT2)の創製研究を行い、高活性かつ高選択的なHDAC8阻害化合物を見出すことが出来た。
合成したSIRT2阻害剤の候補化合物について、SIRT2選択的阻害活性の確認実験を行い、HDAC類の選択的阻害剤の創製にCuAAC反応を用いる化合物ライブラリーの創製手法が有用であることを実証する。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
J. Med. Chem.
巻: 55 ページ: 9562-9575
10.1021/jm300837y