研究概要 |
短寿命原子核の精密質量測定をめざして、多重反射型飛行時間測定式質量分析器(MRTOF-MS)を開発している。平成22年度には、オフライン試験において最高分解能を得る条件を極めること、オンライン測定のためのビーム輸送装置の設計を行った。ルジビウムの1価イオンをイオン源で生成し、イオントラップに捕集・冷却した後、MRTOF-MSに入射し、8.5msの飛行時間において、半値幅で33nsのスペクトルを得ることに成功した。これは質量分解能Rm=140,000に相当し、1000個のイオンを観測すれば、質量を3x10-7の相対精度で決定できることになる。このような分解能を従来のペニングトラップ型質量分析器において同時間で得るには、実存しない90Tもの磁石が必要となる。さらに、カリウム40という自然に存在する放射性同位体の質量を、K39,K41の二つの安定同位体の質量を参照にして、実際に決定したところ、既知の値と40keVの極めて小さい誤差で一致することを確認した。 近日中に計画しているオンラインでの短寿命核の測定に向けて、テーパー型冷却用高周波4重極ビームガイドの設計を行い、数値シミュレーションの結果、効率良くMRTOFのイオントラップに入射・蓄積できることを確かめた。 平成23年度には、理化学研究所のRIビームファクトリのプロトタイプ低速RIビーム生成施設において、比較的軽い放射性同位体のオンライン質量測定を行う予定である。
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