研究課題/領域番号 |
10F00823
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
和田 道治 独立行政法人理化学研究所, 低速RIビーム生成装置開発チーム, チームリーダー
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研究分担者 |
SARAH Naimi 独立行政法人理化学研究所, 低速RIビーム生成装置開発チーム, 外国人特別研究員
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キーワード | MRTOF質量分析器 / 短寿命原子核 / イオントラップ |
研究概要 |
短寿命原子核の精密質量測定のために多重反射型飛行時間測定式質量分析器(MRTOF-MS)の開発研究を進めている。オフラインイオン源を用いた調整の結果Rbイオンの質量分解として140,000(8.5msの飛行時間において)を達成している。この性能を一般的なペニングトラップ質量分析器(PT-MS)で得ようとすると実存しない90Tもの磁石が必要になる。とりわけ重い短寿命核イオンの質量測定においてMRTOF-MSが精度においてもPT-MSを凌駕することが実証できた。 最初のオンライン試験は2011年3/12に予定されていたが震災の為中止となりその後も電力事情等の影響で平成23年末まで実験を行う事ができなかった。最近の短時間のオンライン試験で上流のガスセル装置とビーム輸送系の動作を再確認できて質量測定器の直前まで8Li(半減期0.8秒)の輸送まで達成できた。平成24年度には実際の測定が開始できる見込みである。 飛行時間測定式の質量測定器では必ず参照となる既知のイオンを用いて校正をする必要がある。しかも同じ質量数に2つ以上の参照イオンがあることが望ましい。そのためのイオン源として静電スプレーによる分子イオン源と低存在比同位体を含んだ分子を高効率で集めるためのRFカーペットを用いた参照イオン源を開発した。この参照イオン源はMRTOF-MSを適用を計画している超重元素の質量測定において極めて重要である。その質量数250~300の領域には安定な原子イオンは存在しないからである。実際にメタノール水溶液に蟻酸を付加した液体から目的の領域のほぼ全ての質量数のイオンが生成できる事が確認できた。 さらにそれをMRTOF-MSで測定するとその質量だけから分子の組成を一意に決定できることが解った。これは参照イオンとしてだけでなく、化学・生物分子イオンの組成決定への応用も期待させる成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
質量測定装置の開発は順調に進行しており、質量校正の為の参照イオン源として静電スプレーイオン源を用いて広範囲の質量数の校正ができることを示せた事は重要な里標塚である。一方震災の影響でオンライン試験は予定より遅れていることは否めない。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度には加速器のビームタイムが予定されているので既存のガスセル装置で提供できる比較的軽いイオンの短寿命核の質量測定を実行できる予定である。いっぽう、本格的応用が最も期待される超重元素の直接質量測定に向けてガス充填型分離器(GARIS)とのインターフェースを開発していく計画である。
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