本研究では、パルスオキシメータを新生児や胎児モニタリングに応用するために、集積回路(ASIC)のノイズ低減とともに、20bitの高分解能A/D変換機能をASICに組み込み、胎児の微弱な光電脈波信号に対応できるよう改良開発する。また、体動にともなう光強度レベル変動は従来のハイゲインアンプの出力を飽和させ一時的な測定不能状態を生じていたが、本研究のパルスオキシメータは光電流をダイレクトに高分解能A/D変換に入力するためアンプを必要とせず、体動に対して有利であるとともに、ノイズが重畳する要素を削減できる。また高い忠実度の信号が得られることから信号処理後の高精度化も期待できる。 本年度の研究期間はH24年4月からH24年11月までとなる。前年度までに、新たな回路構成のパルスオキシメータをASIC技術により試作しており、本年度は基礎特性試験と信号処理法のソフトウェア開発を重点的に進めた。高分解能A/D変換器を組み込んだシステムの評価においては、胎児や新生児の頭部を模擬した生体模擬試料(ファントム)を用いた。ファントムは寒天を基材とし、中に動脈を模擬したシリコンチューブを埋め込み、その径をPCから制御可能とした。ファントムを用いてシステムの基本動作特性を評価した結果、理論解析ともよく一致した。また信号処理法に関して、心拍近傍の狭帯域フィルタが高精度化に有効なことが明らかとなり、最適なフィルタ設計の知見を得た。今回開発したパルスオキシメータ及び最適なディジタル信号処理法について国際会議にて発表し、海外査読付論文誌Review of Scientific Instrumentsに投稿し掲載された。本研究により開発された光電流直接入力型回路と信号処理法はパルスオキシメータの改良に幅広く活用できると考えられる。
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