研究概要 |
本研究では,光照射により分子形状や色が変化するフォトクロミック分子とよばれるアゾベンゼンを含有した高分子材料を用いて,ナノメータースケールからマクロスケールにおよぶ様々な分子の動きを誘起することにより,新たなメカニカルデバイスおよび光記録デバイスへ応用を目的としている。 主に二つのトピックについて検討を行った。一点目はアゾベンゼンを含む架橋液晶高分子フィルムの光誘起変形に関するものである。この光誘起変形については、分子構造と物性の相関について不明な点が多いが、光学的な手法を用いることにより種々の物性を同時に定量測定することに成功した。その結果、分子構造の変化が隣接する分子配向変化を誘起し、最終的には巨視的な変形へと階層的に増幅することが明らかとなった。これらの結果を踏まえて分子設計を行うことにより、極めて類似の構造であっても光応答部位を架橋部位に組み込むあるいは組み込まないことにより光変形方向を制御できることが明らかになった。 二つ目のトピックは、光応答性超分子材料についてである。水素結合やハロゲン結合と呼ばれる非共有結合によるアゾベンゼンの自己組織化を利用した材料の光応答性について検討を行った。水素結合における液晶性の発現や光応答性についてはこれまで数多くの検討例があるものの,ハロゲン結合を用いた超分子の光応答性については検討されていない。本研究ではAalto University(フィンランド)およびPolitecnico di Milano(イタリア)との共同研究により,ハロゲン結合により自己組織化した材料が極めて大きな光応答性を示すことを明らかにした。従来の水素結合と比較して極めて高低差の高い表面凹凸を光形成できることがわかった。
|