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2011 年度 実績報告書

高周期14族元素―炭素バイブリッド型π電子系化学種の創成及び特性解明

研究課題

研究課題/領域番号 10J00042
研究機関筑波大学

研究代表者

田中 裕明  筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)

キーワード有機化学 / ケイ素 / シリレン / シリレンラジカルカチオン / 二価化学種 / N-ヘテロ環状カルベン / X線結晶構造解析
研究概要

二価化学種カルベンのケイ素類縁体であるシリレンは、それら自身での多量化が進行しやすいため、最近まで合成すら難しい化合物群であった。最近では適切な置換基の設計による立体保護や電子的安定化を利用して、いくつかの安定シリレンの合成が達成されたものの、これまでに合成された化学種は炭素、窒素、ハロゲンなど、ケイ素に比べて電気陰性な元素で置換されたものに限られている。本研究ではシリレンの空の3p軌道に、強いσドナー性の配位子であるN-ヘテロ環状カルベンを配位させることで、はじめての電気陽性なケイ素置換基を持つシリレン-NHC錯体を合成・単離することに成功した。
また、シリレンの化学については精力的な研究がなされている一方、シリレンラジカルイオン種についてはほとんど報告例が無い。本研究では、合成に成功したシリル置換シリレンがエネルギー準位の高いHOMOに非共有電子対を持つことに着目し、化学的な一電子酸化反応を検討した。その結果、はじめてのシリレンラジカルカチオンの合成・単離にも成功した。さらに得られたラジカルカチオン種を一電子還元すると中性のシリレンがほぼ定量的に再生したことから、可逆な一電子酸化還元系となっていることもわかった。
X線結晶構造解析の結果、シリレン-NHC錯体は三配位ケイ素まわりがピラミッド化しているのに対して対応するラジカルカチオンでは三配位ケイ素まわりがほぼ完全に平面構造であり、一電子酸化によって分子構造が大きく変わることが明らかになった。さらにESRスペクトル測定およびNPA電荷分布計算から、不対電子は三配位ケイ素上にほぼ局在化していることを明らかにした。
これらの実験結果は、はじめて電子供与性の置換基を有するシリレン、応用的にも重要な新規のケイ素ラジカル種を合成しその性質を実験・理論の両面から明らかにした、という点で高周期14族元素化学に新たな知見を与えた。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] An Isolable NHC-stabilized Silylene Radical Cation : Synthesis and Structural Characterization2012

    • 著者名/発表者名
      H.Tanaka
    • 雑誌名

      Journal of the American Chemical Society

      巻: 134 ページ: 5540-5543

    • DOI

      10.1021/ja301180v

    • 査読あり
  • [学会発表] シリル置換シリレン-NHC錯体の合成と性質2012

    • 著者名/発表者名
      田中裕明
    • 学会等名
      第92回日本化学会春季年会
    • 発表場所
      慶應義塾大学(横浜)
    • 年月日
      2012-03-27
  • [学会発表] N-ヘテロ環カルベンによって安定化されたシリレンラジカルカチオン:合成、構造、及び性質2011

    • 著者名/発表者名
      田中裕明
    • 学会等名
      第38回有機典型元素化学討論会
    • 発表場所
      石川県立音楽堂邦楽ホール(金沢)
    • 年月日
      2011-12-08
  • [学会発表] NHCによって安定化されたシリレンラジカルカチオンの合成と性質2011

    • 著者名/発表者名
      田中裕明
    • 学会等名
      第15回ケイ素化学協会シンポジウム
    • 発表場所
      シーパル須磨(神戸)
    • 年月日
      2011-10-21
  • [備考]

    • URL

      http://www.chem.tsukuba.ac.jp/sekiguch/

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公開日: 2013-06-26  

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