研究課題/領域番号 |
10J00057
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
森澤 貴之 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 岩澤理論 / 類数 / 円単数 |
研究概要 |
研究員は本年度、ウェーバーの類数問題に関する研究を行った。ウェーバーの類数問題とは素数pに関し有理数体の円分的Z_p拡大の全ての中間体の類数が1であるのか、という問題である。この問題に関して、特にpと異なる素数lについて、類数のl-非可除性に焦点をおいて取り組んだ。 一般の奇素数pに関しては、素数lがpベキの円分体における分解の様子に対して十分に大きい値である場合には、類数を割らない、という結果を得た。この定理の証明には、Mahler測度、Schinzelの不等式、Minkowskiの格子点定理を用いた。 p=3の場合には、研究員はよりよい結果を得ている。まず、Mahler測度の計算をより精密に行うことで、上述の結果を精密化した。また、Mahler測度をL_1-ノルムと見て、一般のL_m-ノルムに拡張し、特にm=2の場合を適用することでよりよい結果を得ている。 研究員はp=2の場合の研究も行った。研究対象である類数は単数群と円単数群の商群の位数という形で現れる。そのため、単数群の構造をよく知る必要がある。そのために、単数群の二つのFiltrationを考える。一方はGalois群を用いて作られるFntrationであり、もう一方はイデアルによる合同式を用いて作られるFiltrationである。研究員はこの二つのFiltrationが一致することを示した。 また、相異なる素数p1、…、ps、lに対し、有理数体の円分的Z_p1×...×Z_ps拡大の中間体の類数のl-非可除性問題を考え、上記と同様の結果を得ている。この問題は近年J.Coatesによって提唱されているZ^拡大についての予想に関わる問題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
p=3の場合には、これまで得られていたほぼ全ての結果に対し、それ上回る結果を証明することができた。また、一部の結果に関しては、その手法を奇素数pに対して一般化することにも成功している。計算機によって計算するためのアルゴリズムも改良され、これまでよりも速く計算がでるようになり、上述の結果とあわせることで新たな結果を得ることにも成功しており、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、一般の奇素数pに対して、その平方を法として原始根になる素数lに注目し、有理数体の円分的Z_p-拡大の全ての中間体の類数がlで割れないことを示す。そのためには、ある特殊な単数についてもっと深く知る必要がある。これまでは、その道具としてMahler測度を用いてきたが、これからはL_mノルムなど他の測度を用いてこの問題に取り組んでいくつもりである。 また、p=3の場合に、81を法として±1と合同でない素数lについては、有理数体の円分的Z_3拡大の全ての中間体の類数がlで割れないことを示す。そのためには、計算アルゴリズムを改良し、よりよい計算機を用いて計算する必要がある。
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