研究課題
研究員は、本年度も引き続き、ウェーバーの問題に関する研究を行った。ウェーバーの問題とは、素数pに関し、有理数体の円分的Z_p拡大の全ての中間体の類数が1であるのか、という問題である。この問題に関して、特に、pと異なる素数lについて、類数のe_非可除性に焦点をおいて取り組んだ。研究員はこの問題に対し、円単数の評価を行うことで研究を行ってきた。これまでは、この円単数に対し、そのMahler測度を計算することで、ある条件を満たす十分大きな素数lに対するl_非可除性を証明した。今年度においては、単数に対する別の高さを用いることで、よりよい評価を得ることができた。その評価を用いることで、これまでにないl_非可除性に関する結果を得た。例えば、p=2の場合には、Fukuda-Komatsuにより、lがmod32で±1と合同でない素数の場合には有理数体の円分的Z_2拡大の全ての中間体の類数はlでは割れない、ということが示されているが、我々の結果を用いると、lがmod64で士1と合同でない素数の場合には有理数体の円分的Z_2拡大の全ての中間体の類数はlでは割れないという結果を得ることができる。これは、同志社大学の岡崎龍太郎氏との共同研究で、現在、論文投稿準備中である。また、特にp=3の場合に関しては、p=3の特性を用いてさらに精密な計算を行うことで、よりよい評価を得ている。この評価を用いることで、lがmod81で±1と合同でない素数の場合には有理数体の円分的Z_3拡大の全ての中間体の類数はlでは割れない、ということを示した。この内容に関しては現在論文を執筆中である。
2: おおむね順調に進展している
一般のpに対し、これまでに得られていた結果に関し、よりよい結果を得ることができた。その結果を用いることで、これまで計算できなかったタイプの素数に関しても、類数の非可除性を示すことにも成功しており、おおむね順調に進展しているといえる。
今後は、まず、評価対象となる円単数の取り方をかえることで、よりよい評価を行う。また、有理数体上に限らず、有限次アーペル拡大体上のZ_p拡大などにも焦点をあてていく。また、イデアル類群の場合に限らず、1-Selmer群やTate-Shafarevich群の1-partに関しても、類似の問題を考えていく。そのために、まずは有理数体上の楕円曲線のSelmer群などを考える。これに対し、これまでWeberの問題に取り組むために用いてきた手法を適用してアプローチしていく。
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