研究課題/領域番号 |
10J00101
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
青木 航 京都大学, 農学研究科, 特別研究員DC1
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キーワード | Candida albicans / Sap / Als / 抗真菌薬 / バイオフィルム / カンジダ症 / 免疫不全 / 基質特異性 |
研究概要 |
1.Sap7がpepstatinA非感受性であることの証明 昨年度の研究において、我々はCanduda albicansの病原性因子である分泌型酸性プロテアーゼ(Sap)に注目した。C. albicansのSap1-10を全種類精製し、その基質特異性を決定する過程で、Sap7がpepstatinA非感受性であることを偶然発見した。Pepstatin Aはほぼ全てのアスパラギン酸プロテアーゼに効果的な阻害剤であり、カンジダ症の研究において、Sap familyの病原性を調べるためによく使われている。しかしながら、そのpepstatin Aが効かないSapが存在するということは、今までの研究に対して問題を提示することになる。 なぜSap7がpepstatin Aに非感受性であるかを調べるために、Sap7の生化学的な性質を網羅的に調べた。その結果、Sap7の活性中心付近のアミノ酸をアラニンに置換したある変異体において、活性は完全に保持しているが、pepstatin Aに対して強い感受性を示すものを取得した。この結果から、Sap7の活性中心付近の構造が、pepstatin Aの接近を阻むモデルを提唱することができる。今後、Sap7を含む全てのSapに有効な阻害剤を設計できれば、新しいカンジダ症治療薬になりうるだろう。 2.C.albicansを特異的に攻撃するペプチドの設計 C. albicansを特異的に攻撃し、副作用が少なく、他の常在菌叢に影響を与えない新しい薬剤の設計を目指した。その薬剤の基本設計は、抗菌ペプチドとその活性を抑制する抑制ペプチドを、Sapによって特異的に切断されるリンカーで接続したものである。このデザインによって、通常時は活性を抑制されているが、Sapの活性を検知することで初めて活性化されるデザインが可能である。 このデザインペプチドの性質を、まずC. albicansの近縁種であるがSapを持たないSaccharomyces cerevisiaeに対して調べた。その結果、生理的なpHにおいてはデザインペプチドが活性を持たないこと、しかし、Sapを用いることで抗菌活性が戻ることをしめすことができた。実際にC. albicansに特異的かどうかを調べるために、このデザインペプチドをC. albicans及びS. cerevisiaeと混ぜ合わせてしばらく培養したところ、C. albicansの生存率のみを大きく下げることに成功した。 これらの結果から、病原性因子の存在を検知して、病原性真菌だけを殺菌する新しいデザイン戦略に基づく医薬を開発することができたと考えられる。今後は、より特異性の高いペプチドリンカーを取得していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初申請においては、デザインペプチドの最適化とその活性測定を予定していた。本年度は、その結果のみではなく新たにSap7がpepstatin A非感受性であること、そしてその悲感受性の原因を特定することにも成功している。そのため、当初予定以上に進展したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初の予定通り、本年度に同定したペプチドリンカーをベースに、C.albicansの挙動を調べることができるイメージングツールを開発する予定である。
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