一次元量子可積分系の基礎的研究を行った。まず、可積分高次スピンXXZ鎖の相関関数を表す多重積分の具体的実行を行った。スピン1の場合に一点関数の計算をすることに成功した。それから、ハイゼンベルクXXZ鎖のベーテ方程式におけるストリング解の数値解法を開発した。従来はストリング仮説を仮定してベーテ根を求める議論が多かったが、ストリング仮説からのずれを正しく求める方法を開発した。この方法を用いて、可積分高次スピンXXZ鎖の基底状態のベーテ根の複素平面上における分布を求めた。さらに、厳密対角化を用いて一点相関関数を計算し、多重積分を実行した結果と比較して両者が一致すること確かめた。さらに、スピン-1/2 XXZ鎖の有限温度相関関数を、短距離の場合に具体的に計算した。また、低温展開、有限サイズ補正も行った。ベーテ方程式の数値解析技術を用いて、動的相関関数の数値計算も行った。まず、ハイゼンベルクXXZ鎖の動的スピン構造因子を形状因子展開法を用いて計算し、Haldane-Shastry模型との比較を行った。形状因子展開を行う際、ストリング解からの寄与も取り込むことにより、高エネルギー領域に強いスペクトル強度があることを見出した。それから、回転する1次元冷却原子気体のスペクトル関数を、ベーテ仮設による形状因子展開法を用いて計算した。そして、Lieb-Liniger模型のYrast励起エネルギーの有限サイズ補正に対する解析的な表式を、ベーテ仮設による数値計算で確認した。最後に、ナノ狭窄磁壁におけるマイクロ波発振の、相対磁化角度依存性について調べた。
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