研究概要 |
宇宙は高温・高密度状態のビッグバンで開闢したとされているが,宇宙が膨張していくにつれて温度・密度は下がり宇宙空間における原子核・電子が結合した中性期に入る.やがて天体の形成が始まるが、形成直後の銀河は大きなエネルギーを放射するため、結合した原子を再び電離していく.これを「宇宙再電離」と呼ぶが,その時期は,赤方偏移6~11と未だ正確には分かっておらず現在天文学最大の謎の1つになっている(特別研究員申請書項目2参照).この形成時期に観測的制限を与えるためには、遠方銀河の直接観測が有効である。すなわち観測した領域中にいくつ銀河が検出されるか,が解明の鍵となる.これを調べるべく我々は、2009年の2月から4月にかけて赤方偏移7.3(約129億光年先)銀河の探査を行ったところ,4個の銀河候補天体を発見した。これらの候補天体が本物の遠方銀河であるかどうかは,銀河の検出率に大きく関わるため非常に重要である.もしこれらが赤方偏移7.3の銀河であれば,水素からの輝線(静止波長121.6nmのライマンアルファ輝線)が分光観測により検出されるはずである.そこで我々は今年度,上記の4候補天体のうち3個について,すばる望遠鏡 微光天体分光撮像装置 FOCASを用いて分光観測を行った.綿密なデータ解析を行なったところ,2天体から輝線を検出することができた.すばる望遠鏡の広視野観測により,ハッブル宇宙望遠鏡で発見された銀河よりも明るく尤もらしい銀河が発見できた.現在,これらの銀河の星形成率などを正確に見積もり再電離との関係を調べている最中である.
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