本研究の最大の目的は、重力連続観測によって火山内部のマグマ移動を明らかにし、現在および将来の火山活動を監視・予測することである。具体的に我々は、現在でも活発な噴火を継続している桜島を研究対象に選択し、桜島ハルタ山観測所(桜島の北西側、標高408メートル)に絶対重力計FG5を設置した。というのも、桜島有村観測坑道(桜島の南側、標高80メートル)では東京大学地震研究所が同様の連続観測を2008年から継続しているため、他の地点および標高における重力変化を理解すべきと考えたからである。2010年5月~2011年3月にかけて重力変化を連続的に観測したところ、ハルタ山では2010年7月から8月にかけて80マイクロガル程度重力値が上昇し、その後ほぼ一定レートで重力値が減少し、2011年3月にはほぼ観測開始時の重力値まで戻っているのが確認された。本研究では、この一連の重力変化が降水や地下水の質量に移動によるものと考え、風間他によって開発された地下水流動解析プログラム「G-water 3D」を桜島地域に適用し、地下水流動に伴う重力変化を補正した。その結果、補正後の重力変化にはプラスマイナス15マイクロガルの重力変化が残っており、2010年6月に上昇、2010年7~8月に減少していることが分かった。この重力変化は、有村観測坑道に設置されている傾斜計の変動(2010年6月に山体収縮、2010年7月に山体膨張)とも調和的であることから、桜島内部のマグマ移動を反映しているものと考えられる。今後は、他機関によって観測されている重力・傾斜・伸縮データも参考にしながら、2010年5月~2011年3月のマグマ移動プロセスをより詳しく考察する予定である。
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