研究課題/領域番号 |
10J00225
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
風間 卓仁 京都大学, 理学研究科, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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キーワード | 重力変化 / 火山 / マグマ移動 / 地下水流動 / 桜島 / 胆沢扇状地 / 南極 / 昭和基地 |
研究概要 |
本研究では、重力連続観測等によって火山内部の密度時空間分布を把握し、マグマ移動に代表される火山内部活動を監視・予測することを最大の目標としている。また、火山活動起源の重力変化を重力観測データから抽出するために、気象・地下水起源の重力擾乱を精度よく補正することも、本研究の主要な目的の1つである。 平成23年度においては、活発な噴火を継続している桜島(鹿児島県)を月に1回のペースで訪問し、火山活動を監視するためハルタ山観測所と有村観測坑道に従来から設置しているScintrex型相対重力計のデータ回収作業およびメンテナンス作業を実施した。この他、気象・地下水起源の重力擾乱の発生機構を理解するために、従来から設置していた気象データロガーおよび土壌水分計のメンテナンス作業も同時に実施した。現在本研究ではこれらのデータの初期解析作業を行っており、次年度には桜島内部のマグマ移動を把握するための本格的な解析を実施する予定である。 また本研究では、胆沢扇状地(岩手県)と昭和基地(南極)において重力・気象・地下水の並行観測を実施し、気象・地下水起源の重力擾乱の発生メカニズムについて検討した。具体的には、観測された気象・地下水データから土壌中の地下水流動を計算機上でシミュレートし、地下水分布の空間積分から地下水起源の重力変化を計算した。胆沢扇状地の場合、この計算された重力変化を観測された重力擾乱と比較したところ、両者は1マイクロガル未満の精度で一致していることが分かった。すなわち、本研究の地下水シミュレーション法を使用すれば、任意の観測点で得られた重力擾乱を高精度に補正することができ、重力観測データから火山起源の重力変化シグナルを把握しやすくなると期待される。次年度には本シミュレーションを桜島にも適用し、重力観測データから火山活動起源の重力変化を抽出する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では桜島における重力連続観測を継続し、順調にデータを取得している。また、胆沢扇状地では気象・地下水・重力の並行観測データを用いて気象・地下水起源の重力擾乱を定量的に議論し、地下水シミュレーションによって重力擾乱を高精度に再現可能であることを示した。したがって、現段階まで火山における重力連続観測は順調であり、重力擾乱の補正方法についても検討が進んでいることから、本研究は概ね予定通り進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、今後も桜島や胆沢扇状地における気象・地下水・重力の並行観測を継続し、重力擾乱発生メカニズムの解明および火山起源重力変化の監視に努める。また、筑波大学(茨城県)や国立極地研究所(東京都)などの研究機関を訪問し、重力計のメンテナンス作業および比較観測を実施する予定である。さらに、本研究で開発した地下水シミュレーションを桜島にも適用し、観測された重力観測データから重力擾乱を補正することによって、火山活動起源の重力変化を抽出し、火山活動の監視や噴火メカニズムの解明に努める予定である。
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