研究実施三年目の本年度は、これまでに構築した企業のデータベースを用いて、計量経済学的アプローチと生産性分析を中心に研究を行った。本年度の研究実施状況とその成果を下記三点にまとめる。 1.国内製造業のCO2及び毒性化学物質で推計した環境効率と、財務指標の関係性を、計量経済アプローチを用いて考察した。財務指標は、資本利益率、資本回転率、売上利益率を適用し、それぞれの財務指標を用いた分析結果を比較することで、環境経営がどのようなメカニズムによって財務指標を改善させているかを考察した。研究成果は、 Business Strategy and Environmentに査読付き論文として公表している。 2.日本と米国の製造業を対象にアンケート質問票による認知指標データを用いて、企業が政府や地域社会、消費者から知覚する環境保全への圧力を、どのように経営に反映させているかを分析した。本研究の成果は組織科学に査読付論文として公表予定である(2013年6月)。 3.国内企業のCO2排出量を考慮した生産性の推計を業種別に行い、その推移の違いを比較・考察した。分析結果より、加工組立型である電気機器と自動車製造業では、効率的な企業と非効率的な企業の両方で生産効率性の改善を達成しており、業界全体で効率性改善を達成していることが明らかとなった。一方で、化学製品製造業や繊維製品製造業では、フロンティアライン上の効率的な企業と非効率的な企業との間の効率性格差が拡大しているため、ボトムアップを促すような試みが重要であると考える。本研究の成果は社会経済研究に査読付論文として公表している。研究成果は社会経済研究に査読付き論文として公表している。
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