中枢神経系の複雑な神経回路網のモデルとなる神経細胞回路を培養系で自在に構築し、そのダイナミクスを評価するための方法論を確立するために、以下の研究課題に取り組んだ。(1)マイクロパターン基板上の微小神経回路における自発的神経活動の解析:マイクロパターン基板上の微小培養神経回路の自発的な活動をカルシウムイメージングによって計測することに成功した。寸法の異なるパターン上の神経回路の活動を比較したところ、神経回路の大きさが増加するとともに自発的バースト活動の頻度が増加することが分かった。また、たかだか十数個の細胞からなる神経回路でも自発活動が発生することを確認することができた。これは、従来考えられていたよりもはるかに少ない数の素子数からなる神経回路であっても、cell assemblyとしての機能を持ちうることを示唆している。(2)酸化チタンの光触媒作用を用いた有機シラン単分子膜の液中分解法の開発:細胞培養環境下で基板表面の細胞接着性を改変できる局所表面改質法は、異種細胞間の相互作用解析や局所神経回路の構築のための細胞操作の自由度を向上させる。本年度は、酸化チタンの光触媒作用を用いて培養液中で有機単分子膜表面(オクタデシルシラン単分子膜)を分解除去できること、それにより基板表面の細胞親和性を局所的に改質できることを、がん細胞株を用いて実証した。改質には、蛍光顕微鏡水銀ランプのUV光、もしくは375nm UVレーザーを用いた。本手法の神経細胞系への適応も進めている。
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