研究概要 |
チロシンキナーゼ阻害剤imatinibを長期間投与し続けることによってimatinib耐性白血病細胞株を樹立し、この細胞を用いて耐性化のメカニズムの解明を行った。その結果、長期間のimatinibの投与によってPTENのプロモーター領域におけるメチル化が起こり、PTENの発現が低下した。またimatinib耐性となった白血病患者から採取した白血病細胞においても同様に、PTENの発現が低下していることを見出した。更に、このPTENの発現低下に関連して、AKT, EKR, STAT5といったシグナル経路が活性し、細胞周期関連蛋白質であるp21, p53の発現が増加、結果的に薬剤耐性化が起こることを見出した(Leukemia 2010)。Imatinib感受性細胞は幹細胞のマーカーであるCD34抗原をほとんど発現していないのに対して、耐性細胞ではその90%以上がCD34抗原陽性であった。ゆえに、この耐性細胞は幹細胞の特性を備えており、白血病幹細胞の実験においていいモデルとなりえる。実際、耐性細胞で見られたPTENの発現抑制が白血病幹細胞でも報告されており、p21の発現増加も報告きれている。この耐性細胞を利用して、さらに耐性に関与していると考えられる遺伝子を模索中である。 また、我々はAML患者から採取した白血病細胞中のCD34+CD38-細胞とCD34+CD38+細胞をautoMACS(ミルテニーバイオテク株式会社)を使って分離し、蛋白質レベルでの発現レベルの比較も行っている。CD34+CD38-細胞はCD34+CD38+細胞に比べてJAK2/STAT5シグナルが活性化していることを見出した。そして、JAK2阻害剤を用いてこのシグナルを阻害するとCD34+CD38-細胞で高発現していたp21の発現が低下し、結果的に細胞増殖抑制が見られることを見出した(Int J Cancer 2010)。
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