有機分子を用いた多孔性材料は、従来までの多孔質物質が有する吸着・分離などの機能に加え光・電気磁場などの特性の付与が可能であるため、近年盛んに研究が行われている。特に光電子特性を有する多孔質構造は、センシング素子やバイオイメージングなどへの応用も期待でき、それらの研究および開発には大きな意義がある。 本研究では、有機塩によって構築される超分子集合体を階層的に集積させる手法を用いた、外部刺激応答性を有する光電子機能多孔性材料の構築を目的としている。有機低分子の自己組織化によって形成する超分子集合体をビルディングブロックあるいは一つの大きな擬似分子と考えることで、高度な合成を経由せず複雑な分子設計や機能の導入を行うことが可能となる。また、超分子集合体の集積によって構築される柔軟な多孔質構造と光電特性を組み合わせることで、外部刺激として構造内に取り込まれるガスや有機分子などの分子形状の違いを構造変化によって認識でき、相互作用変化と分子形状の両方を認識した発光変調が期待できる。本年度は多孔質構造内に導入する機能性分子としてアミノフェニルシアノアクリル酸誘導体を用いた。この分子は分子内でCT相互作用が可能な発光性有機色素であり、取り込まれる分子種の変化を鋭敏に感知した発光特性が発現すると考えた。ビルディングブロックとして用いる超分子集合体は、従来までに当研究室で報告されている超分子クラスターを用いた。その結果、構造内に取り込むゲスト分子に応じて青から黄色までの発光を示す多孔質結晶を得ることに成功した。この発光変調は、構造変化に起因した幅広い変調領域を達成しているだけでなく、ゲスト種の置換基などのわずかな違いにも応答して発光変調しており、分子集合体を用いた柔軟な多孔質構造ならではの特性が得られている。また、可逆的なゲスト分子の脱離吸着も可能であり、センシングシステムとしての応用も期待できる。
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