研究課題/領域番号 |
10J00367
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山本 淳志 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 有機結晶 / 有機塩 / 多孔質構造 / 蛍光 / センシング / 動的変化 |
研究概要 |
多孔性材料は、古くから吸着・分離・触媒など様々な用途で用いられてきた。一方近年、従来のこれらの機能に加えて光電子特性を付与する研究が機能性有機低分子を用いて盛んに行われている。光電子特性を有した多孔質構造は、センシング素子やバイオイメージングなどへの応用も期待できるため、それらの研究開発には大きな意義があると言える。 本研究では、機能性有機酸と有機塩基からなる有機塩によって構築される超分子集合体を階層的に集積させることで、外部刺激応答性を有した光電子機能多孔性材料を構築することを目的としている。有機塩の自己組織化によって形成する超分子集合体をビルディングブロックとすることで、高度な合成を経由することなく複雑な分子設計や機能化を行うことが可能となる。本年度は、機能性有機酸としてスチルベンジスルホン酸などビニル基を有した蛍光性スルホン酸誘導体を用いた。ビニル基を有した蛍光性有機酸は蛍光特性だけでなく光による二量化や異性化が期待できることから、取り込まれた分子に応答した蛍光発光特性と光応答的な特性変化が可能ではないかと考えた。また、ジスルホン酸によって超分子集合体同士を強く連結することで、多孔質構造の安定性の向上を狙った。その結果、取り込まれた分子の吸着脱離によらず細孔構造を安定に維持した多孔質構造の構築に成功した。またこの多孔質構造は、選択的な気体吸着特性を示した。さらに、アントラセン部位にビニルスルホン酸基が置換されたジスルホン酸を用いたところ、高い構造安定性と分子応答的に蛍光を青から赤まで変化させる多孔質構造が得られた。このような有機多孔性物質は前例のないものであり、超分子集合体を用いることで簡便な機能付与を実現した本手法ならではの結果であるだけでなく、センシングシステムとしての応用も期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機能性有機酸として新たにジスルホン酸を用いることで、多孔質構造の安定化の向上を今回達成している。また、これまで得られた結果を基に設計した蛍光性ジスルホン酸を導入した結果、高い構造安定性と分子応答的蛍光特性を両立した多孔質構造の構築に至っている。この分子応答的な蛍光特性は取り込んだ分子との相互作用と置換基の立体障害に起因している。これらの結果は、分子応答的な発光特性を有した多孔性材料を用いた、有機低分子の選択的・高感度システムにつながる大きな成果だと言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまで多様な蛍光性分子の設計を行ってきたが、今後はこれまでに構築した構造の構造的評価や特性評価を重点的に行っていく。現在までに構造決定が行えていないものについては、放射光施設SPring-8などを用いた構造決定を行っていく。特性評価については、これまで行ってきた揮発性有機低分子の吸着脱離による発光特性の挙動変化を調査していくだけでなく、気体分子吸着による蛍光特性変化の評価も行っていく。これらの物性評価を行うと同時に、再沈法によるナノ粒子化やスピンコート法による結晶性薄膜化を行い、デバイスとしての応用を考えた形態にすることでセンシング、イメージング材料としての評価を行う。
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