研究課題/領域番号 |
10J00376
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
永野 克将 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | APJ / α1-AR / ヘテロダイマー / APJ-point mutant / 徐脈 / 冠動脈狭窄(攣縮) / α1-AR阻害剤 / 冠動脈狭窄疾患モデル |
研究概要 |
(1)APJ-point mutantを用いたヘテロダイマー形成責任部位の検証 APJとα1-AR間のヘテロダイマー形成およびシグナルの相乗的活性化機序を解明するため、APJ-point mutantを作製してin vitro assayを行った。その結果、APJが受容体C末端側・362番目のグルタミン酸を利用してα1A-ARとダイマーを形成し、シグナルを相乗的に活性化していることを突き止めた。 (2)マイクロフィル血管造影法を用いたマウス冠動脈血管の観察 APJはα1-ARの協調作用による強力な血管収縮作用がどのような生理作用に影響するかを検討するため、SMA-APJマウスへAPJのリガンドであるapelinを投与したところ、一過性の昇圧反応と同時期に心拍数の極端な低下(徐脈反応)および、心臓の冠動脈において強力な冠動脈の狭窄が生じる事を確認した。 (3)α1-AR阻害による心機能および血管異常収縮改善効果の検討 APJシグナルを起点とした冠動脈狭窄由来の心機能障害(徐脈)に対し、α1-ARの阻害剤を用いた治療効果を検討したところ、in vitro assayから唯一APJと膜上でダイマー形成し、かつシグナル相乗活性化能が最も高かったα1A-ARの阻害剤が最も効果的な治療効果を示す事を発見した。 【総括】本年度発見された冠動脈の狭窄は冠動脈攣縮と呼ばれ、心筋梗塞等の虚血性心疾患の発症原因とされているが、病態発症機序は不明であり、予防法や治療法が確立していない。それに対し、本研究で用いているSMA-APJマウスはヒトで認められる冠動脈狭窄と類似した所見を示しており、本マウスが冠動脈狭窄疾患モデルである事が証明されればこれらの問題に対応する事が可能となり、社会的にも大きく貢献出来る事が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで研究を進めてきた「血管異常収縮」というイベントが、「冠動脈攣縮」という病態に関与している事を見いだした事は大きな進歩である。解析に先立ち、マイクロフィル血管造影法、ゾンデ経口投与法、カルシウム測定法等の実験・解析手法を習得できた事も重要な点である。また、血管で発現している受容体のサブタイプが血管収縮の感受性に関与している可能性を見出したのも重要な進展であり、期待以上の成果を得られたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度明らかとなった冠動脈狭窄(攣縮)反応においては、病態メカニズムや治療法を解析するためのツールが存在しておらず、対応が遅れている。今後は本研究で用いているSMA-APJマウスが冠動脈攣縮モデルマウスとしてどの範囲まで利用可能かを見極める事が重要であり、そのためのより詳細な検討を行い、正確な病態生理学的評価を行う予定である-(ex;心電図、冠動脈血流量の検討)。これらの解析が進むことにより、SMA-APJマウスがモデル動物である事が証明できれば、社会的にも大きく貢献できることを期待している。
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