有機薄膜太陽電池(OPV)を高効率化させるためにはドナー材料とアクセプター材料の混合膜からなるバルクヘテロジャンクション型素子が有効であるが、この素子においては電荷分離後のラジカルアニオン・カチオンの再結合プロセスを抑制する必要がある。近年、高効率が報告されている太陽電池材料は多くの場合、分子内にドナー(D)ユニットとアクセプター(A)ユニットを有しており、これらの材料をD-A分子と呼ぶ。また、これらの材料を用いることで、ラジカルアニオンとカチオンの寿命が長くなることが報告されており、それにより再結合が生じにくくなっている可能性が考えられる。そこで本研究では、分子内におけるドナー性とアクセプター性の強度が二分子再結合確率に及ぼす影響について見積もりを行った。ここでは新規D-A分子三種類の合成を行い、OPVの作製、およびD-A相互作用と二分子再結合定数の見積もりを行った。D-A相互作用を増加させるに伴い、OPVの変換効率が向上し、最高でエネルギー変換効率(ηPCE)=1.22%を得た。また、time-of-flight法を用いて、各素子の二分子再結合定数を算出したところ、D-A相互作用を増加させることで二分子再結合定数が低下するという結果が得られた。このことは、すべての素子において、活性層の相分離構造が同様と仮定した場合、D-A相互作用を増加させることで、活性層の誘電率が増加し、クーロン・キャプチャー半径が小さくなったためだと考えられる。このように、ドナー分子のD-A相互作用を制御することによって二分子再結合を抑制できることを示した。
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