私の研究目的は、T2K実験において世界で未発見の電子ニュートリノ出現モードを発見することである。そのためには高精度でニュートリノ振動を測定する必要があり、ニュートリノ反応を正確に測定することが重要となる。 そこで私は、T2Kにおけるニュートリノ反応をより高精度で測定するための研究を行った。T2Kの前置検出器であるFGD (Fine Grained Detector)は、ニュートリノ反応で生成される反応点付近の短い軌跡を観測する検出器であり、ニュートリノ反応を測定する上で鍵となる。私はFGDにおける粒子の飛跡再構成の手法を改良し、正しい軌跡をより高い検出効率で観測する方法を開発した。 また、ニュートリノ反応を測定する上で問題となっているのが、反応によって生成されるπ中間子の原子核との二次的な反応が十分に理解できていないという点である。そのため、私はシンチレーティングファイバーを用いた荷電π中間子の原子核との反応を正確に測定するための検出器を製作し、カナダ・TRIUMF研究所の二次ビームラインを用いて荷電π中間子の反応断面積を測定する実験を行った。この測定の結果を用いることで、荷電π中間子と原子核との反応モデルを確立し、それによってニュートリノの反応断面積やフラックスの測定をより精度よく行うことができる。 以上のように、昨年度は最終的なニュートリノ振動測定を行う上で土台となる、ニュートリノ反応測定についての研究を行った。本年度はこの研究をさらに発展させ、最終的なニュートリノ振動解析に向けて、T2K前置検出器におけるニュートリノビーム測定についての研究を行う。
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