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2012 年度 実績報告書

T2K実験における電子ニュートリノ出現モードの発見

研究課題

研究課題/領域番号 10J00437
研究機関京都大学

研究代表者

家城 佳  京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)

キーワードニュートリノ / ニュートリノ振動
研究概要

私の研究目的は、T2K実験において電子ニュートリノ出現モードの発見を行うことである。2011年6月、T2K実験は初の解析結果を公表し、電子ニュートリノ出現モードの徴候を観測したことを明らかにした。更にその後データ統計を加えて解析方法も改良することにより、2012年6月に京都で開かれた国際学会では電子ニュートリノ出現の証拠を捉えたことを発表した。また海外の原子炉を用いたニュートリノ振動実験でも反電子ニュートリノ消失モードが観測された。これはT2K実験が示唆した振動角θ13の値を裏付けるものであり、θ13が有限の値を持つことが確実となった。
これらの成果はニュートリノ振動の全容解明に対する大きな進歩であった。しかし、ニュートリノ振動はまだこれで全てが解明されたわけではない。θ13が有限であることは、レプトンセクターでのCPの破れが存在している可能性があることに繋がっている。このCPの破れを測定することは、物質優勢宇宙の謎を解明する上で重要な手掛かりとなる。CPの破れの度合いを測定するには、ニュートリノ振動をこれまで以上の精度で測定することが必要である。
CPの破れの測定を実現するには、更なるデータ統計をためるだけではなく、測定における系統誤差を削減して少しでも測定精度を上げる必要がある。現在の振動解析において最大の系統誤差要因となっているのは、ν反応に伴って生成されるπ中間子の二次的反応の不定性である。これを改善するため、私はシンチレーションファイバーを使用した新型の検出器を開発し、TRIUMF研究所(カナダ)のπビームラインにおいて荷電π中間子反応測定実験を行った。ここで私はπ中間子と原子核の反応を過去の実験の約半分の不定性で測定することに成功した。私は更にこの結果を利用し、T2K実験の物理シミュレーションのπ中間子反応モデルのパラメータの最適化を行うことで、モデルのパラメータ不定性を半分以下に削減することに成功した。
私はこれらの改善を踏まえ、また2012年度に新たに取得したデータ統計を追加することで、新たにニュートリノ振動解析を行っている。本解析により、世界最高の精度で電子ニュートリノ出現モードの測定結果が得られることが期待されている。これが実現されれば、今後のCP位相δの測定に向けた大きな前進となる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] T2K Neutrino Flux Prediction2013

    • 著者名/発表者名
      K. Abe, et al.
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 87 ページ: 1-34

    • DOI

      10.1103/PhysRevD.87.012001

    • 査読あり
  • [雑誌論文] T2K Fine-Grained Detectors2012

    • 著者名/発表者名
      P. -A. Amaudruz, et al.
    • 雑誌名

      Nuclear Instruments and Methods A

      巻: 696 ページ: 1-47

    • DOI

      10.1016/j.nima.2012.08.020

    • 査読あり
  • [学会発表] T2K実験のための荷電π中間子反応断面積測定82012

    • 著者名/発表者名
      家城佳
    • 学会等名
      日本物理学会2012年度秋季大会
    • 発表場所
      京都産業大学(京都府)
    • 年月日
      2012-09-12
  • [学会発表] PIAnO-Harpsichord π-N interaction measurement at TRIUMF2012

    • 著者名/発表者名
      K. Ieki
    • 学会等名
      14$^{th}$ International Workshop on Neutrino Factories, Super Beams and Beta Beams
    • 発表場所
      Willams & Mary (USA)(招待講演)
    • 年月日
      2012-07-25
  • [学会発表] DUET experiment : Measurement of final state interaction of with finely segmented scintillating fibers2012

    • 著者名/発表者名
      K. Ieki
    • 学会等名
      The XXV International Conference on Neutrino Physics and Astrophysics (Neutrino2012)
    • 発表場所
      京都テルサ(京都府)
    • 年月日
      2012-06-04
  • [学会発表] T2K実験のための荷電π中間子反応断面積測定112012

    • 著者名/発表者名
      家城佳
    • 学会等名
      日本物理学会第68回年次大会
    • 発表場所
      広島大学(広島県)
    • 年月日
      2012-03-27

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公開日: 2014-07-16  

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