研究課題
ポルフィリンは拡張π共役系分子であり、一般に平面性の高い構造を取る。天然においては植物の葉の緑色はポルフィリン類縁体由来であり、光合成などにおいて重要な役割を担っている分子である。これまでにポルフィリンは電子を受け渡し易い電子ドナー分子として光合成のモデル分子の構築に用いられてきた。一方で、高い平面性を有するポルフィリン骨格を歪ませる方法として、嵩高いフェニル基を12個導入したドデカフェニルポルフィリンはフェニル基間のπ-π相互作用によりサドル型に歪むことが知られている。この歪みを有するポルフィリンは、通常の平面型ポルフィリンに比べて高い塩基性を有し、容易にピロール窒素をプロトン化でき、生成するジプロトン化体を安定に単離することができる。プロトン化体は、高い還元電位をもつ電子アクセプターとして働くために、これまで電子ドナーとして研究されてきたポルフィリンを電子アクセプターとして用いることで、これまでになされてこなかった新規なドナー・アクセプターの構築が可能となる。これは光合成反応中心の電荷分離過程のモデル分子として重要である。また、プロドン化に用いた酸の共役塩基と水素結合を形成することも分かっている。このことに基づき、カルボン酸などの酸/水素結合ドナー部位を有する分子を用いることで、プロトン化ポルフィリンを電子アクセプターとしたドナー・アクセプター超分子系を設計した。今年度行った研究では、以上のような観点に基づきポルフィリンやフェロセンなどの種々のドナー分子との超分子形成と光誘起電子移動について検討を行った。また、プロトン化の対象をポルフィリンにとどめずに、ポルフィリン類縁体であるフタロシアニンについても、構造的な歪みとプロトン化挙動の関係について明らかにした。フタロシアニンの場合はポルフィリンのプロトン化と異なり、プロトンが環の外側につくため、フタロシアニン環に水素結合部位としてアルコキシ基を導入することでより塩基性が高くなることを明らかにした。以上の結果を踏まえて今後はプロトン化ポルフィリン、フタロシアニンを用いた機能発現を目指す予定である。
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Angewandte Chemie International Edition
巻: 第50号(掲載確定)
Journal of American Chemical Society
巻: 第132号 ページ: 10155-10163
Journal of Physical Chemistry C
巻: 第114号 ページ: 14290-14299