研究課題/領域番号 |
10J00454
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
本多 立彦 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | フタロシアニン / プロトン化 / 水素結合 / 酸化還元特性 / 酸素還元反応 |
研究概要 |
機能性有機材料への応用が注目されているフタロシアニンは、メソ位に窒素を有するため、ブレンステッド塩基としてプロトンを受容することが可能であり、プロトン化に伴うπ共役系の電子状態の変化が期待される。しかし、一般にフタロシアニンのプロトン化は強酸性条件下でしか起こらないため、プロトン化によるフタロシアニンの化学的、電子的性質の制御を行うためには、生成するプロトン化体を安定化するための分子デザインが必要となる。今年度の研究(1)では、α-オクタブトキシフタロシアニン亜鉛(Zn(OBu)_8Pc)のプロトン化体が、ブトキシ基による分子内水素結合を形成することで安定化されることを見出した。また、プロトン化によりPc環の電子受容性が顕著に向上することが分かり、フェロセン類によるZn(OBu)_8Pcの電子移動還元反応の酸・塩基の交互添加による制御、及びZn(OBu)_8PcとZn(OBu)_8PcH^+共存条件での光誘起分子間電子移動反応について明らかにした。 フタロシアニン金属錯体のプロトン化においては、配位子だけでなく中心金属の電子受容性が向上することが期待される。また、還元反応に対してより活性の高い低原子価錯体を容易に生成できるようになることが予想される。今年度の研究(2)では、コバルトオクタフェニルフタロシアニン(Co(Ph_8Pc))を用いた、酸性条件下における酸素の触媒的還元反応について検討し、電子源として用いたフェロセン類の還元力に応じて、酸素と反応する活性種がコバルト(II)フタロシアニンからコバルト(1)プロトン化フタロシアニンへと切り替わることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
23年度の研究成果では、フタロシアニンのプロトン化反応が配位子だけでなく中心金属の酸化還元特性の制御に有効な手段であることを見出した。このような効果はこれまで研究を行ってきたポルフィリンの場合には見られなかった特徴であり、フタロシアニンの光材料や触媒として利用する上で重要な知見となると考えられるため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究結果から、フタロシアニンのプロトン化反応が配位子だけでなく中心金属の酸化還元特性の制御に有効な手段であることを明らかにした。このことを踏まえて、今後は光材料、触媒反応への展開を目指した新規な金属フタロシアニンの合成を行い、プロトン化による酸化還元特性への影響についてさらに詳しく調べる予定である。これに加えて、触媒反応への応用についても検討を行う予定である。
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