研究概要 |
fosB遺伝子は選択的スプライシングにより2つのmRNA(fosBとΔfosB)を生じ、それぞれFosB、vFosBあるいはΔFosB、Δ2ΔFosBタンパク質をコードする。これらのfosB遺伝子産物は、他のJun、Fosファミリータンパク質とともに転写因子AP-1のサブユニットとして機能する。当研究室では現在、fosB遺伝子を完全に欠損するマウス(fosB^<G/G>)、ΔfosB mRNAのみを産生するマウス(fosB^<d/d>を樹立している。本研究は、fosB遺伝子改変マウスの脳からニューロン、アストロサイト、ミクログリア、オリゴデンドロサイトを単離培養し、fosB遺伝子産物によって発現が調節されている標的遺伝子を網羅的に探索同定し、fosB遺伝子産物の個体レベルでの生理的役割を解明することが目的である。 本年度は脳を構築している細胞群であるニューロン、アストロサイト、ミクログリアを初代培養により単離し、それぞれのfosBとΔfosB mRNAの発現量を調べた。その結果、各細胞により発現量は異なり、特にニューロンでは海馬由来ニューロンと大脳皮質由来ニューロンで20倍以上異なることがわかった。さらにfosBとΔfosB mRNAの比も各細胞群によって異なることがわかった。このうち、ミクログリアに関して遺伝子操作マウス(fosB^<G/G>,fosB^<d/d>)由来の細胞と野生型マウス由来の細胞に関してマイクロアレイを行ったところ、Fold changeが1.5以上のものが9遺伝子見つかり、fosB mRNA産物によって発現が活性化される遺伝子の他に、ΔfosB mRNA産物によって発現が抑制される遺伝子、ΔfosB mRNA産物が一部発現を活性化させる遺伝子も存在することがわかった。今後はニューロン、アストロサイトに関してもマイクロアレイを行い、3種類の細胞間での違いを検討する予定である。
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