研究概要 |
再試行型待ち行列はコール・センターにおける客の再試行や情報通信網における再送制御をモデル化した非常に重要なクラスの待ち行列である.再試行型待ち行列では客がシステムに到着した時に全てのサーバが他の客によって占有された場合,その客があるランダムな時間後再試行するものとする.客が独立に再試行するため,再試行型待ち行列を記述するマルコフ連鎖の遷移率が状態依存となり,その解析解の導出は極めて難しい.私はこれまで連分数を用いて,サーバ数が4以下の場合の解析解を導出したが,同様の手法ではサーバ数が5以上となると解析が不可能である.そこで,私は22年度では複数サーバ再試行型待ち行列に対する高精度な数値解析を行った.再試行型待ち行列はある特殊なレベル依存準出生死滅過程によって定式化することができる.私はまず,一般のレベル依存準出生死滅過程の定常分布を計算するため,行列連分数を用いた計算アルゴリズムを提案した.このアルゴリズムは既存手法と比べ計算量を抑えながら,メモリ使用量は大きく削減することが示された.この成果は査読付き国際会議QTNA2010で発表した.さらに提案アルゴリズムを再試行型待ち行列の解析に適用した際にレベル依存準出生死滅過程の疎構造を利用し,効率的なアルゴリズムを提案した.この業績は国際会議MCQT10で発表するとともに,その後,査読を得てAnnals of Operations Research誌に採録決定された.さらに日本オペレーションズ・リサーチ学会待ち行列研究部会主催「待ち行列シンポジウム」で発表し,「研究奨励賞」に選ばれた。
|