研究課題/領域番号 |
10J00502
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大山 薫 (内山 薫) 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 傍嗅皮質 / TE野 / マカクサル / 連合記憶 / 報酬期待 / 細胞外記録 |
研究概要 |
これまで、視覚刺激-視覚刺激-報酬の連合を形成後の傍嗅皮質の情報処理を調べた。課題では、2つの視覚刺激(Cue1,Cue2)を経時的に呈示した。2つの視覚刺激の組合せによってのみ、現在の試行が報酬あるいは無報酬試行かが分かる。この課題を遂行中のサルにおいて、傍嗅皮質のニューロンが、Cue2呈示期に「視覚刺激の物理的特徴の情報」、「特定の試行の情報」、「報酬期待の情報」をコードした。「報酬期待の情報」の潜時は、「視覚刺激の物理的特徴の情報」の潜時よりも遅かった。また。「特定の試行の情報」の潜時は、両方の潜時の中間の値を示した。本結果は、傍嗅皮質において「視覚刺激の物理的特徴の情報」の連合により、「特定の試行の情報」が作られ、「特定の試行の惰報」と「報酬期待の情報」の連合により、Cue2呈示期に「報酬期待の情報」を表現することを示唆する。 「視覚刺激の物理的特徴の情報」は腹側視覚経路のTE野に由来していると考えられる。もし上記のような情報処理が傍嗅皮質で行われているとすれば「特定の試行の情報」と「報酬期待の情報」はTE野よりも傍嗅皮質で先に現れると考えられる。そこで平成23年度は、同課題を遂行中のサルのTE野からニューロン活動を記録し、傍嗅皮質のニューロン活動と比較した。「特定の試行の情報」と「報酬期待の情報」の潜時は、傍嗅皮質の方がTE野よりも早かった。視覚刺激-視覚刺激-報酬の連合においては、傍嗅皮質で視覚刺激の物理的特徴の情報から報酬期待の情報への変換が起こっている可能性を示唆している。これまで、内側側頭葉の記憶システムにおいては、傍嗅皮質は視覚刺激の物理的特徴の統合に機能があるとされてきた。本研究により、傍嗅皮質の記憶システムに対する寄与は視覚刺激の物理的特徴の情報処理のみでなく、視覚刺激の意味すなわち報酬期待の情報処理も寄与していることが示唆された。本研究成果を第41回北米神経科学大会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験の過程において、予想をしていなかったデータ(「特定の試行の情報」)が得られた。本研究課題を遂行する上で、このデータが重要であると判断したため、実験データの追加、解析を行ったため。
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今後の研究の推進方策 |
11,現在までの達成度 でも記したように、本課題を遂行する上で、「特定の試行の情報」が、傍嗅皮質の情報処理の解明に重要である。そこで、「特定の試行の情報」の特性を詳細に調べる必要がある。そのため、実験データの追加、解析を行う。
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