視覚刺激と報酬の連合が形成される過程に関わる脳内の情報処理を電気生理学的手法を用いて解明することを目的としている。今回の実験では、同じパターン刺激が、その前に呈示される色刺激によって、「報酬あり」か「報酬なし」に関係づけられている。実験動物は、色刺激を記憶し、続いて呈示されるパターン刺激を見て報酬の有無を連想できる。平成24年度はマカクサルTE野と傍嗅皮質の情報処理の比較を行った。また、傍嗅皮質において、状況に応じて同じパターン刺激が呈示されていても、異なる視覚刺激の意味、すなわち「報酬の有無」を表現することが分かった。本研究により、傍嗅皮質が状況に応じて行動を変える際に重要である可能性が示唆された。本研究成果は国際一流誌であるThe Journal of Neuroscienceに掲載された。 傍嗅皮質は、高次視覚野であるTE野から多くの神経線維連絡を受けている。状況に応じて異なる視覚刺激の意味を表現する処理が、傍嗅皮質あるいは傍嗅皮質以下の領域で起こっているのかどうかを調べるために、記録したTE野のニューロン活動のシグナルを傍嗅皮質のニューロン活動のシグナルと比較した。その結果、報酬の有無の情報の潜時は傍嗅皮質とTE野で同じだった。また、色刺激とパターン刺激の組み合わせの情報の潜時は、TE野よりも傍嗅皮質で先に現れた。本研究結果は、状況に応じた柔軟な視覚刺激の意味の表現が、TE野よりも下流で起こっていることを示唆している。本研究成果を学術雑誌へ投稿するために準備している。
|