研究課題
私は、蒸発と液化を伴った流体力学について理論的、数値的に研究をしている。流体力学は従来、蒸発と液化を考慮していないが、小貫明によって考案されたDynamic van der Waalsモデルを利用すれば、これらの効果を潜熱の流れも含めて考慮することができる。そこで、私はこのモデルを用いて数値計算を行った。まず、液滴が濡れ易くかつ冷たい(または熱い)固体床上に置かれた状況での、系の振る舞いについて調べた。濡れ易い床上に液滴を載せると、液滴は床上を拡がり、最終的には薄く平坦な形に達する。このとき、床の温度と液滴を含めた流体の温度に違いが存在すると、液滴の拡がり方が、温度が均一な場合と異なる。床の温度が冷たい場合では、液滴が固体床上を拡がる際、液滴の接触線(固体・気体・液体が交わる点)付近で特に液化が盛んに起きていることがわかった。この接触線付近で液化が激しく起きることによって、液滴は液化が起こらない場合よりも早く床を濡らすことがわかった。さらに、これは現在も進行している課題であるが、撥水性の固体床上での気泡の挙動(沸騰)について調べた。沸騰は、身近な現象であるが、これを潜熱にまで言及して調べたダイナミクスの研究は少ない。私は、この沸騰現象について数値的に調べている。その結果、沸騰の初期において気泡が成長する際、蒸発が激しく起き、潜熱が奪われることが原因で気泡内の温度が低下することを見出した。その後、気泡内の温度は、床から気泡への熱の流入が蒸発による潜熱の流出を上回ることによって温まっていく。
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Physical review E (The American Physical Society)
巻: Vol.82 ページ: 021603-1-021603-14