研究概要 |
酸素や光に対して不安定で,有機溶媒抽出ではサンプル調製中に変化してしまうような代謝物を安定に解析するため,超臨界流体のユニークな性質である抽出効率の良さを利用してオンライン超臨界流体抽出-超臨界流体クロマトグラフィー質量分析システムの構築に取り組んだ.まず,脂溶性代謝物の標準品を用いて超臨界流体抽出およびクロマトグラフィーの条件検討を行った.種々の条件の最適化後,従来の有機溶媒抽出と抽出効率,再現性および代謝物の安定性を比較したところ,オンライン超臨界流体抽出システムを用いることで有機溶媒抽出と同等の抽出効率が得られると同時に,酸化されやすい物質をより安定に抽出できる可能性を示した。さらに,オンライン超臨界流体抽出-超臨界流体クロマトグラフィー質量分析システムをメタボロミクスへ応用するために,バルブシステムを用い,試料の連続抽出,分析が可能なシステムを構築に取り組んだ.最大で9サンプルの連続抽出・分析が可能なシステムの構築に成功した.これらの結果はオンライン超臨界流体抽出-超臨界流体クロマトグラフィー質量分析システムは,アテローム性動脈硬化発生のシグナル伝達に関与する酸化リン脂質の詳細かつ正確なプロファイリングを行うのに非常に有用であることを示唆している.当該手法の応用により,アテローム性動脈硬化の分子機構の解明やアテローム性動脈硬化を起因とする虚血性心疾患や脳血管障害のバイオマーカー発見に有用な知見の獲得が期待される.
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