研究課題/領域番号 |
10J00569
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
柿倉 泰明 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ヘムタンパク質 / 金電極 / 自己集合化 / 光電変換 |
研究概要 |
本研究はヘムタンパク質集合体の電極表面上での構築と、これに基づく高機能性バイオデバイスの構築を目的としている。本手法では多様な機能を有し、補欠分子を置換することでさらなる機能改変が可能なヘムタンパク質を用いるため、様々な機能を発揮するヘムタンパク質集合体を利用したデバイスの構築が期待される。これを達成するために、本研究代表者はヘムタンパク質とその補欠分子(ヘム分子)の相互作用に着目した。すなわち、ヘムとタンパク質の特異的相互作用をタンパク質間で誘起させてタンパク質を連結し、これを電極表面に固定したヘムタンパク質集合体修飾電極の構築を行った。今年度の具体的成果を以下に示す。 1)ヘムタンパク質の一種であるシトクロムb_<562>の変異体(H63C)の表面にヘム誘導体を修飾し、これに引き続きH63Cに元来含まれるヘム分子を除去することにより、モノマーユニットを得た。金電極にヘム誘導体を修飾し、これを起点としたH63C集合体の電極上への固定化を行った。電気化学的手法および水晶発振マイクロバランス法(QCM)、原子間力顕微鏡(AFM)測定によりタンパク質が積層していることを確認した。 2)ヘムの中心金属を鉄から亜鉛に置換したH63C集合体を調製し、これを修飾した電極も同様に調製した。 これらの電極上へのヘムタンパク質の修飾量を見積もるためにQCM、AFMによる測定を行い比較したところ、H63C集合体を用いた場合、およそ7~8個のH63Cが電極上に積層している結果を得た。亜鉛ポルフィリンの光励起を利用したカソード方向への光電流発生実験を実施した結果、単一層の修飾電極よりも光電変換効率が約5倍向上し、さらに光電変換効率はモノマーユニット間のリンカー長に依存することが示された。このことから、集積化に基づくH63C修飾電極の光電変換効率はモノマーユニットの集合化状態に依存することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本申請者の研究の目的は配向制御されたヘムタンパク質集合体の電極界面上での構築とその機能化である。これまでに、金基板に亜鉛ポルフィリンを有するチトクロムb_<562>を積層する手法を確立し、積層による光電変換特性の向上を示すことができた。またAFMによる積層状態の直接観察を行い、チトクロムb_<562>が電極に対して垂直方向に積層されていることを確認した。よって当初の計画通りに研究を進められたと自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、電極上に積層したタンパク質集合体の配向性や積層量などの要因が、電子移動反応の効率やタンパク質集合体の安定性に与える影響について検証を行う。またミオグロビンなどシトクロム類以外のヘムタンパク質を用いたタンパク質集合体修飾電極の構築と機能評価を計画している。
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