研究課題
平面四配位を持つ無限層SrFeO2は、高圧でスピン転移を起こすことが報告されていた。このスピン転移は一般的なスピン転移とは異なる興味深い点が3つある。一つ目は四配位を持つ金属において初めて報告されたスピン転移であるということ。二つ目は、高スピン(S=2)から低スピン(S=0)ではなく、高スピン(S=2)から中間スピン(S=1)に転移すること。三つ目はスピン転移に伴って反強磁性-強磁性転移や絶縁体-金属転移など他の転移も同時に起こることである。この特異なスピン転移の起源を明らかにするためにSrFeO2と同様に平面四配位を持つスピン梯子格子Sr3Fe2O5に高圧の実験を行った。予想された通り同様のスピン転移を観測し、鉄の平面四配位のスピン転移の普遍性を明らかにした。さらにSr3Fe2O5では圧力誘起構造相転移を起こすことがわかり、放射光X線回折により高圧の構造を明らかにした(2011年JACS誌)。この構造相転移はSr3Fe2O5と類似の構造を持つ物質でも起こることが予想され、詳細な実験を進めている。金属ハイドライドを用いた低温還元法により新規鉄酸化物AFeO2(A=アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド等)の合成を行い、放射光X線回折、中性子回折、メスバウアー分光測定などの実験によりその構造や物性を明らかにした。具体的にはSrFeO2にBaを40%以上置換すると、無限層構造からペロブスカイト骨格を持つユニークな構造に構造相転移を起こすことが分かった(論文準備中)。新しい構造は新しい物性の格好の舞台となるため、さらなるカチオン置換やアニオン挿入などによって、機能的な物性の探索を目指している。またSrFeO2に三価の価数を持つ希土類元素の置換にも成功した。BaやCaなどの二価の置換とは大きく異なる挙動を示すことが分かってきており、詳細な実験を進めている。
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Journal of The American Chemical Society
巻: Available online ページ: Available online
Inorganic Chemistry
巻: 49 ページ: 5957-5962