これまでの研究により我々は、in vitro実験系において、HTLV-I感染細胞との共培養により他の細胞のI型インターフェロン(IFN)応答が惹起されることを示した。ここで産生されたIFNは感染細胞自身のHTLV-I発現を抑制し、感染者生体内での可逆的であり、また、非常に低い発現状態と類似していた。このようなIFN応答が感染者生体内においても存在の有無を確認するために、我々はIFN応答を惹起するHTLV-I感染細胞内の責任因子の同定を試みた。現在のところ、ウイルス粒子形成とは無関係ながら、恒常的に発現しているユニークなRNA転写産物を見いだしている。しかしながら、IFN応答との因果関係は不明のままである。この研究とは別に、I型IFNの感染細胞のHTLV-I発現に対する影響を調べた。IFN-αの添加によりHTLV-I発現はmRNAレベル、タンパク質レベルにおいて共に有意な抑制を誘導した。これらの事は、細胞内Taxタンパクの減少に続いて逐次的に起こっていることが示唆された。さらに、IFN添加によって感染細胞は増殖抑制を起こし、ATL治療にも一部使用されているAZT(逆転写阻害剤)によりp53の活性化を介したアポトーシスを引き起こした。これらの研究は、現在多数報告されているATL(成人T細胞白血病)へのIFN治療効果の機序を基礎的に説明し得るものであり、この点から重要な研究であると考えられる。現在論文作成を完了しており、平成25年5月にアクセプトされた。
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