研究概要 |
燃料電池用金属触媒の反応性に関する理論的研究に関して密度汎関数理論に基づく第一原理電子状態計算を援用して研究を行った。今年度は特に、白金代替触媒材料の探索や高効率電極のデザインを念頭に置き、カソード側電極としての二元金属電極の反応性についての基礎的な知見を積み重ねた。二元金属電極材料としてPt-CrとPt-Ni系における、歪みや配位子効果に着目して研究を行った。その結果、Pt-Cr系でのO_2分子の解離吸着反応性は配位子効果による影響が大きいと明らかにした。Pt-Cr系では解離吸着反応の活性化障壁はPtのみの場合に比べて高いが、O原子の吸着エネルギーは小さくなると示した。反応性をさらに高めるためには、Pt-Cr間の相互作用を大きくし、O原子の吸着エネルギーを小さく保ったまま活性化障壁を下げることが重要である。これらの結果から、PtとCrの割合が1:1であることが望ましいと結論付け、実験によってもこの結果の妥当性が示されている。一方、Pt-Ni系ではO_2分子の解離吸着反応性は歪み効果による影響が大きいと明らかにした。これはわずかな幾何学的な構造の変化でも反応性に大きな影響を与えるということであり、Pt-Ni系の計算結果が実験結果とあまり一致していない原因となっている。また、PtはNi表面上で容易に圧縮されるため、高いPt-Ni比が望ましいと明らかにした。加えて、特定のPt-Ni系の構造を形成することにより、Pt-Pt間の距離を大きくすることも重要であると示した。これらの成果を、Journal of Nanoscience and Nanotechnology, Vol.11, pp.2944 (2011)にまとめて出版し、27^<th> European Conference on Surface Science等4つの国際会議と1つの国内会議にて発表した。
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