研究概要 |
平成24年度は、白金表面の対酸素反応性における磁性の影響、白金とオスミウムの比較による金属種による触媒作用の差異及び共吸着水分子と外部電場がテトラヒドロホウ酸イオンの吸着構造へ与える影響に関する理論的研究を行った。これらの研究は燃料電池電極触媒表面上での酸素分子とテトラヒドロホウ酸イオンの反応過程の解明を通じ、実用に供する燃料電池技術開発に寄与するものである。この研究における主な成果を要約すると以下の通りである。(1)強磁性遷移金属基盤上白金原子膜上の酸素還元反応密度汎関数理論に基づく第一原理計算手法とモンテカルロ法を組み合わせ、常磁性純白金表面上と遷移金属基盤上の強磁性白金原子膜上での酸素還元反応について調査している。また、遷移金属基盤上の白金原子膜のキュリー温度は室温よりもかなり高い事も計算で確認し、広い温度範囲で高い反応性が維持できることを明らかにした。(2)テトラヒドロホウ酸イオンの脱水素反応密度汎関数理論に基づく第一原理計算手法を援用し、実験から推測されていた白金表面上でのテトラヒドロホウ酸イオンの酸化反応の初期過程(BH4ad→BHad3Had)を確認し、テトラヒドロホウ酸イオンの解離作用の起源を調査している。その結果、白金表面上でテトラヒドロホウ酸イオンは解離吸着する一方、比較対象として調査したオスミウム表面上では解離せず分子状吸着することを示している。特にカナダ・ブリティッシュコロンビア大学の実験研究者と共同研究を行っており、協力体制をする事ができた。これらの成果をまとめ注目度の高い学術雑誌であるChemical Physics Letters,Dalton Transactions等に出版した。この研究成果は「第53回真空に関する連合講演会」において発表賞を受賞した。
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